写真展を後にして私達はエスカレーターで7Fに降りた。
夕食までは少し時間があったということもあるし、デザイン性の高いリビング・キッチン用品を私が見たかったということもあったからだ。筒の長い白い加湿器や生活感を排除したフードプロセッサなどをゆっくりとゆっくりと歩きながら眺めた。後ろについてくる彼が写真展について話しを始めた。 「で、正直どうだった?何か気に入ったことはあった?」 私が答える前に彼は言葉を続ける。いつもそうだ。 「俺は正直なところ想像の範囲の中かなって感じ。ま、期待し過ぎてたということもあるけど。でも、教科書にはモノクロの写真しか載ってなかったから解らなかったけど、カラーの写真とかを見ると、自分達と同じ時代の人なんだなってなんだか親近感が沸いて、なんていうか過去の人の話じゃないんだと思ったんだよね。で、戦場の市街地にいる子供の写真も多くあったけど、その子供が何かを感じている目を表情を一番効果的に取ろうとしている写真からも本当にキャパが平和を望むが故に写真を撮り続けているということが良く解った気がしたんだ。実は、この写真展に来る前までは、単にキャパは戦争写真家として自分の興味や写真のプロフェッショナルとしてだけで、戦場に赴いているだけなのかと思っていたんだけどね。ま、それが浅はかな考えだったのかもしれないけどね」
「ふーん。私は特に前情報無く行ったから、そんな変化は無かったけどね」
そう答えながら私は、 「あなたはいつも相手の話を聞く前に、自分の言いたいことだけ言っちゃうから、会社で信頼を得られないのよ。だから、同期の渡瀬君みたいにポンポンといい仕事がまわってこないのよ。それに話が取り留めな過ぎるのよ。もう少し整理してから話してよ」 と思っていた。
でも、それをここで言っても仕方がないということは解っていた。だから口には出さなかった。このことはこれまで幾度となく言ってきたということもあるし、本人が課題として認識するまでは、物事は変わることがないからだ。言うだけで変わってくれるというお気楽な話はどこにもない。
指摘について大切なポイントは、彼自身が課題と認識しなくちゃと感じ始めている時に、それを逃さずタイムリーに指摘することなのだ。
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