いつもの日記

2008年10月22日(水) 6:楠木

「あと間違えの無いように付け加えておくとすると、藤田の父の奥さんは先に病気で亡くなっている。確か1000人に1人の確率で起きるナントカという難病だったと思う。だから彼が、新しい女と仲良くすることは自然であり、彼が死ぬ時に一緒だった女との仲はとても良くて、いつ再婚してもおかしくないなと周りは思っていたんだ。俺も含めてね」

寄り添った人間もいつかは亡くなる。そしてそれが思いのほか早く来るケースもある。でも残った者は立ち直って生き続けなければならず、また場合によっては、新たな伴侶を見つけることになろう。

だが、そんなにすんなり物事は進まない。基本的にはその事実を認めたくないという、時期に突入するはずである。それを乗り越えれば、即ちその事実を自分の一部として取り込めるられれば、次の一歩が踏み出せるかもしれない。でも逆に言えば、なかなか取り込めないというほど、真摯なのかもしれない。

藤田の父はその事実をきちんと受け入れたのだろうか?そして、真摯だったのだろうか?

ただこの言及は間違っている。この手の話について真摯かどうかは他人が評価できるものでは全くない。断じてない。それは絶対に当事者にしか解らないものだからだ。

僕は顎をさすりながらテーブルの上のグラスとその男の後ろ姿を見ながらそんなことを考えていた。男は一通りの話が終わったあとテーブルから立ち、テラスの手すりにつかまって、じっと海を覗き込んでいた。

話をしてくれた男は、藤田の父が死んだ事故を追った大陸の記者だ。名前は楠木と言った。

僕ら2人は、ちょうど藤田の父の車が落ちたとされる場所を見下ろすところに立っているカフェのテラス席で話していた。夏が終わり、いよいよ本格的に秋に突入する季節だった。照りつける太陽もなく、真っ白の大きな雲が浮いてて、気持の良く晴れた日の昼下がりだった。


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