無責任賛歌
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|藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2003年01月15日(水) アレももう幻の名作/『ふたつのスピカ』3巻(柳沼行)/『定廻り同心 最後の謎解き』(笹沢左保)

 そう言えば、今年の成人式は、去年に比べれば比較的おとなしかったそうですね。テレビでは、やっぱりバイクをパパラパパラパーってフカシてるアホが何人か映ってましたが、タイホされるほどのヤツは出なかったようで、どうやら若い人たちもなかなかオリコウになってきたようです。
 困ったねえ、これじゃオジサンたちが「近頃の若いもんは」って定番の文句が言えなくなっちゃうじゃないですか(^o^)。日々の生活に追われるばかりですっかり疲れ果てて、トウの昔にやる気も生きがいも失っちゃってるのに、とりあえずはトシ食っただけで手に入れた肩書きの上にノウノウとふんぞり返ってるだけの無能なバカオヤジどもにとってですよ、唯一、自己の存在を肯定できるのは、「若いヤツラより自分のほうが常識人」という錯覚の上にアグラをかいてられるときだけじゃないですか。
 そんなバカオヤジたちの姑息で淫靡で下らないささやかな楽しみを、若い人たちは奪おうってんですか。トシヨリは大切にしてくださいよ。
 須らく、若者は伝統的にアホをやり続けてほしいものです。どうせ10年経ったら自分たちが「近頃の若いモノは」と言う立場に回るんですから。


 大塚康生さんのホームページ『大塚康生のWEB峠の茶屋』の「いっぷくBBS」に、大塚さんご本人が映画『ルパン三世 風魔一族の陰謀』(1987)について、ちょっとビックリした「余談」を載せている。

 1、演出不在、シ−ン担当のアニメ−タ−が中心となってシ−ンごとの全コンテを切っている。
 2、予算の関係で声優を取り替えて不評を買った。
 3、技術的には宮崎さんが(ひそかに)褒めている珍しい作品。
 4、東宝と日本テレビの権利関係のいざこざから今後もDVD化等が望めない

 この『風魔一族』には「監督」表示はない。
 オープニングにクレジットされているのは「演出」として、大関雅幸氏の名前が挙げられている。ところが後年、大塚氏が『作画汗まみれ(改訂版)』の中で明かしたところによると、大関氏はテレビ畑出身でそれなりのキャリアはあったのだが(『銀河鉄道999』や『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』など)、切ったコンテがテレビ的な単純なもので、『風魔』の制作に当たっていたテレコムのスタッフにはあまりにも物足りないものであった。
 で、結局、大塚氏が「監修」という形で、実質上、大関氏は降ろされ、1番で語られたような仕儀に相成ったというわけである。……そう言えば、当時の『アニメージュ』には大塚さんのコメントは載ってたけど、大関さんのはなかったな(^_^;)。
 そのあたりの事情は既に知っていたのだが、2番の「声優変更」が「予算」の関係だったとはねえ。と言うのも、宮崎さんも大塚さんも前々から声優の変更はしたがっており、『カリオストロの城』も、声優を全部入れ替えたがっていたからである。
 『風魔』も既に「見たことない」若い人も多かろうから、参考までに声優がどう変わったか紹介しておこう。

 ルパン三世 (従来)山田康雄 → (風魔)古川登志夫
 次元 大介 (従来)小林清志 → (風魔)銀河万丈
 石川五ヱ門 (従来)井上真樹夫→ (風魔)塩沢兼人
 峰 不二子 (従来)増山江威子→ (風魔)小山茉美
 銭形 警部 (従来)納谷悟朗 → (風魔)加藤精三

 今やベテランの右の方々も、15年前ならギャラも安かったってことか。でも加藤精三さんみたいなキャリアのある人が混じってたら、これが予算のせいだとはフツーは気づかんて。
 不評を買った、というのは、私も目の当たりにしたことがある。
 ビデオが発売されたころ、知り合いの女の子を何人かウチに招いて、この『風魔』の上映会を開いたのだが、古川さんの声が発せられた途端、「エー!?」「ヤダー!」「ちがーう!」と、ブーイングの嵐だったのである。もちろん、事前に「声優は違うよ」と伝えていたにもかかわらずである。
 冷静に考えたら「ルパン=山田康雄」なんてのは、ただの刷り込みに過ぎない。それが証拠に、クリント・イーストウッドから山田康雄の声が聞こえてきたら「ルパンやん」と笑っていたアニメファンが当時は腐るほどいた。吹替え洋画ファンにしてみれば全く逆で、「なんでルパンがロディー(『ローハイド』)の声で喋ってんだよ」ってことになるのである。
 けれどだからこそ、洗脳されちゃってる人間には何を言ったってムダって雰囲気ができあがってしまっていて、『風魔一族』は不当に評価が低くなってしまっている。映画シリーズの中では唯一、五ヱ門を主役にした番外編的な造りで、小粒な印象は否めないが、そのアニメーションとしての完成度は『カリオストロの城』を凌いでいる部分も多々ある。特に、途中のカーチェイスと五ヱ門の殺陣は、テレビ・映画全作を通じて、最高レベルの作画がなされているのではなかろうか。宮崎さんが誉めてるってのも、宜なるかな。
 もちろん、声優の演技だって、先入観を取り除いて聞けば、全然悪くはない。というか、手抜きが当たり前になってた当時の山田康雄よりも、古川登志夫の若々しい声の方が遥かによかった。
 女の子たちが口々に文句つけてるのを聞きながら、アニメマニアならぬアニメミーハーには、モノを見る目がないんじゃねーか、と腹が立ったことを覚えている。

 さて、ちょっと気になったのは、大塚さんが「今の時期」にこの『風魔』の話を持ち出してきたのはどうしてかな、ということだ。
 つまりねー、全く同じような状況で、ジブリが「今」、映画を作ってるからなんだよねー。
 そう、『ハウルの動く城』での監督交代劇である。劇場映画作品もあるとは言え、前監督の細田守氏はもともとテレビの人である。あえて憶測だけでモノを言うが、細田氏の切った絵コンテ、ジブリスタッフから見たら「ナニこれ?」ってな出来のものに見えたんではないか。そう考えれば、宮崎さんが公式に発した「これは自分が監督をした方がいいと思った」というコトバの意味が納得できるのである。
 細田氏にそんなに実力がないとは思わないが(『ポケモン』も『どれみ』も、細田氏担当の回は絶品だ)、それでも宮崎さんの目から見たら「未だし未だし」だったんじゃなかろうか。
 大塚さんのこの発言、「アニメ業界って、こういうことよくあるんですよ」と、ジブリの件も似たようなもんだと匂わすための行為じゃないか、と考えるのは穿ちすぎかなあ。

 ああ、でもあの名作がDVD化されないとはなあ。
 これだけはLDボックスで買っておいてよかったってことかな。けれど、考えてみたら、劇場版はほかにも『ルパン三世(VS複製人間)』も『念力珍作戦』も『バビロンの黄金伝説』もまだDVDになってないんじゃないか。出来不出来はあるけれど、最近のテレビスペシャルに比べれば、これらの初期映画版のほうがずっとずっと面白いんである。
 『ルパン』の面白さは、やっぱり原作に第1テレビシリーズと劇場版で判断してほしいんである。


 職場に出てみたら、「今日は臨時の会議がありますよ」と言われて、イヤな予感がする。だいたい上司から出された「臨時」の会議が、あっさりと片付くわきゃない。たいていは何か無理難題を押しつけてくるのが普通だからだ。
 案の定、会議は6時過ぎまでかかる。
 まあ、詳しい内容は書いちゃうと私の職種がバレちゃうんで、ちょっとだけ「事情を変えて」説明すると、これまでウチの職場、業績が悪いとかなんとかリクツつけて、毎日ムリヤリ全員に1時間残業させてたのね。もちろん残業手当は出してたんだけど。
 でも、これはやっぱり正しいあり方じゃないんで、残業をやめようということになった。で、どうするかというと、残業時間まで正規の時間にすることにしたと。
 ……改善じゃないじゃん!
 もちろん会議は罵声が飛び交う大混乱。けど幹部連が意見を撤回する気配はまるでなし。会議後は同僚たちの「やめてやる」ブツブツがあちこちで聞かれたが、これって体のいいリストラじゃねーのかな。けど、部下をただの手ゴマとしか見てない上司のもとに、マトモな連中が残るとも思えんが。
 私ももちっと楽な部署に異動できるんなら、給料がちっとばかし下がっても文句はない。っつーか、まともな交通機関も通ってない山向こうまで毎日通わなきゃなんないのは、もうイヤだ(-_-;)。


 帰宅したらギリギリアニメの『ヒカルの碁』に間に合う。ちょうど「伊角編」のあたりをやってるのだな。
 ふとオープニングを見て、監督が神谷純さんからえんどうてつやさんに変わってることに気づく。ここしばらく見てなかったんだけど、どうやらもう変わって1ヶ月以上経ってるらしいぞ。
 また何かオトナの事情があるのかなあ、と勝手に思うが、ただ、初期の西澤晋さんのように「降ろされた」わけではないらしい。神谷さんは「監修」としてまだ名前がクレジットされている。これが最終回に向けてのスタッフ強化ってことならいいんだけど。

 ただでさえ体調が悪いのに、長引いた会議のせいで頭痛がひどい。
 空気の悪いとこに何時間も押しこめやがってよう。休憩もなし、茶の一つも出ねえ。それで何のアイデアが出せるかってんだ。
 なんだか失神するような感じで、8時には落ちていた。
 でも充分には眠れない。12時前に目が覚めてしまうから、結局翌朝にもう一度寝直し。こんなんじゃカラダのリズムが狂っちまうじゃないか。……ってもう狂ってるから風邪が治んないんだよなあ。


 笹沢左保『定廻り同心 最後の謎解き』(祥伝社文庫・560円)。
 再販本を除けば、これが笹沢氏379冊目の単行本、これから刊行予定の『海賊船幽霊丸』が380冊目。
 笹沢氏の絶筆である。
 笹沢氏が生涯400冊を目指して果たせなかった思いを綴ったエッセイ、『四百冊に達せず』も自筆原稿をそのままに収録しているが、衰え行く肉体と精神と葛藤しつつ、自らの無念を語るその周年、作家って商売ってのはやはり業なんだなあ、とつくづく思う。

 実質、最後の作品である『江戸艶女図絵 代理の花嫁』、果たしてこれが70歳を越えた人の筆かと驚くほどに艶っぽい。
 性に無知で、床入れもままならぬ花嫁のために、代わりに花婿と交合して見せる「介添女」。つまりなんですか、オボコ娘に「これはああしてこうしてこうするのよ」って手ほどきするっての?(・・;) ……あまりにもとんでもないんで、てっきりこれって笹沢さんの創作した設定かと思ったら、なんと実在した商売なんだって。『好色一代女』や『きのふはけふのものがたり』などにも表れているそうだが読んでないから知らん(^_^;)。
 川井屋の一人娘、おりんの代わりに介添を務めることになったのは、花婿の平八のかつての想い人、おさと。大木屋の末娘、おさとは七年前に嫁入りして、わずか四年で夫に死別し、以来一人身のままであった。おりんの花婿となる平八は、昔、大木屋に奉公していて、そのころからおさとの方も平八に恋い焦がれていたのだ。
 相思相愛の二人は、それとも知らず、別々の道を歩み、再びこうした奇縁で結ばれる。しかし、二人の睦み合いを陰から覗いていたおりんは、それが愛の表現とも知らず、恐怖を抱く……。
 平八とおさとは、おりんそっちのけで自分たちの営みに没頭しちゃうのだけれど、この描写がもう微に入り細に入り、くんずほぐれつねちっこくて、もしもこれを映像化するんだったら、ぜひともノーカットで30分くらい延々と撮ってほしいくらいだ。それにしてもねー、江戸時代だからしょうがないんだろうけど、アレの瞬間の声が「ああ、極楽」とか「ああ、堪忍」ってのは、なんと言えばいいんでしょうねー、エロスを感じる前に、うっかり笑っちゃいそうだよ(^_^;)。
 いや、ホントに笑っちゃうのは、この声を聞いたおりんが、「堪忍」ってのを文字通り受け取って、おさとが哀願してるのに平八が拷問し続けていると思いこんじゃうとこね。
 確かに、滑稽な勘違いではある。
 けれど、岸田秀曰く、「本能の壊れている」人間には。こういったこともままあることなんじゃないかって気がするね。ましてや江戸時代の商家の一人娘ときたら、世間の淫らなウワサなんかそうそう耳に入ってこなかったんだろうし。
 さて、ストーリー的には、この先、平八、おさと、おりんの三角関係はどうなっちゃうんだろう、と気を揉むところである。近松門左衛門だったら、即、「道行」ってことになっちゃうんだろうけれど、笹沢さんは意外なくらいにあっさりと結末を付けてしまう。
 初夜の後も何度も逢瀬を重ね、狂おしいほどに求め合った平八とおさと、誰に諌められるというわけでもなく、さばさば別れてしまうのである。おりんもそのころにはようやく真実に目覚めていた。というわけで、三方めでたしめでたし。
 あまりにもあっけらかんとしていて、なんだかキツネにつままれたような結末ではある。もしかしたら、体力的にも気力的にも、これ以上の描写を笹沢さんはできなくなっていたのかも、とゲスの勘繰りをしたくもなる。
 けれど、笹沢さんの考える「江戸の粋」ってのが、こういう「潔さ」にあるんじゃないかな、とも思うのだ。本来、平八とおさとは、結ばれるはずのない二人だった。それが、ふとした縁で再び巡り会えた。けれど、これは本来あってはならぬことである。そのことを二人は自覚していた。初めから二人は、これが別れるための出会いであることを知っていた。そういう縁もあることを知ることが「粋」の本質なんじゃなかろうか。
 笹沢氏のダンディズムは、よく木枯し紋次郎に譬えられたが、原作の紋次郎は乾いているようでいて意外と女々しい。自分の無力に背を向けて逃げている印象すらある。紋次郎のその後ろ姿は、粋になりたくてなりきれなかった笹沢さんの投影、とも見える。紋次郎に比べれば、平八もおさとも実にサッパリしていて気持ちがいい。笹沢さん、この二人を書きながら、内心、羨ましく思ってたんじゃなかろうか。
 380冊の著書だって相当なものである。なのに400冊に届かぬ自らを悔しく思う自分自身を「オレもまだまだ粋にゃなれねえな」と自嘲する笹沢さんの姿が、平八とおさとの向こうに見えるような気がする。


 マンガ、柳沼行『ふたつのスピカ』3巻(メディアファクトリー/MFコミックスフラッパーシリーズ・540円)。
 前巻でアスミを思いっきり落ちこませた“悪役”佐野先生が、あっさりと“改心”して退場。……作者が優しいせいなんだろうなあ、どうも徹底した悪人ってのを描けないのだね。ドラマ的にはこれって「弱点」になっちゃうんだけど。
 心を閉ざしていたライバル・マリカも、もう心を開き始めた。まだ3巻なのに展開速すぎ……っつーか、人を信じ過ぎてないか? この作者。
 こうなるともう、あと1巻くらいで終わらせちゃった方がよくないかなあ。長いドラマを引っ張るってことがこの作者には難しいみたいだし。

2002年01月15日(火) チュパカブラってなんだよ/『機動戦士ガンダム ジ・オリジン ―激闘編― SECTION �機伸供�
2001年01月15日(月) 雪は降る、貴女は来ない/『ウルトラマン対仮面ライダー』(池田憲章・高橋信之)



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