無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年11月16日(金) 若葉マークはどこへ行く/歌劇『さまよえるオランダ人』(ドイツ・ザクセン=アンハルト歌劇場)ほか

オタアミ当日まであと日! 日しかないのだ!

 脚本家、永原秀一(ながはら・ひでいち)氏が、14日、心不全のため死去。享年61歳。
 特撮関係ではあの悪名高き、『惑星大戦争』及び“はちよん”『ゴジラ』の脚本及びノベライズまでやっちゃったので、才能のない人のように思われてるが、その辺が難しいところである。何たって、あの時期の『ゴジラ』は(今でもそうだが)シバリが多くて、誰が書いたって駄作にしかならん状況だったしなあ。
 マンガ『松田優作物語』の中に、松田優作と永原秀一のカラミを紹介したエピソードがある。泡坂妻夫のミステリ『乱れからくり』が映画化された際、主演の松田優作が酔って「こんなシナリオがやれるか!」と引き裂いたというのだ。激怒した永原が「俺は自分の命かけて脚本書いてんだ!」と松田に謝罪を求め、松田が頭を下げた、という一件があったらしい(マンガでは永原の名前を隠してはいるがバレバレ)。
 しかし、松田優作を弁護するわけではないが、あの『乱れからくり』はプロデューサーの田中文雄も認める超駄作であって、私も原作をズタズタに改竄して魅力のカケラも残さなかったシナリオには当時本気で激怒していたものだった。だいたいこの人、本格ミステリには向かない人なのである。
 じゃあ何がよかったかというと、新聞記事にも載っていたが、この人の代表作はなんと言っても『狙撃』だろう。
 若きスナイパーと年老いたスナイパーの決闘を描いたこの映画、やや現実離れはしてたが、加山雄三のもったいつけ演技はともかく、おそらくこれがほぼ遺作に近い森雅之の名演が光る傑作になっていた。ラストの砂漠での対決はまんま西部劇だったけど、脚本家のオマージュが感じられる名シーンだったと思う。……別にガンマニアってわけじゃない私が唯一好きな銃がモーゼルなんだけど、それはこの映画で岸田森が持ってた銃だったりするのだな。
 実はあとはたいした映画の脚本書いてない。『野良猫ロック』シリーズは見てないからなんとも言いようがないが、『蘇える金狼』はまあ魅力的ではあったけれどシナリオ自体はメリハリがなかったし。
 ちょうど今、CSファミリー劇場で『西部警察』やってる。やっぱり脚本はいい加減(^_^;)。でも「命をかけて書いてる」ってのは案外本当だったのかもなと思う。永原氏の脚本からは理性とか知性ってものが決定的に欠けていたし、だからこそ「情熱」だけがこの人の原動力だったんじゃなかろうか。


 今日は久しぶりの観劇の日である。
 先日の日記にも書いた通り、しげがアンケートでチケットを当てたのだ。
 ハナキンとはいえ、平日の夜のことで、最近残業も多く、果たして行けるものかどうか危ぶんでいたが、ちょうど今日だけ早引けできることになった。っつーか、ムリヤリ休み取ったんだけど(^_^;)。
 いきなり仕事を入れられたらオシマイなので、職場に退出時間通りにしげに車をつけてもらい、さっさと乗り込む。時間は4時半。チケットの引き換えは5時半からだが、会場の福岡サンパレスまでは通常なら30分、ラッシュ時でも2倍かかるということはあるまい。充分余裕で着けると、安心していた。していたのよ、ホントに。

 しげが地図を私に渡し、ナビをしてくれと頼む。
 「……箱崎まで行って、左折しようと思うんだけど」
 「……箱崎? なんで?」
 福岡以外の方には地名を出しても解るまいから、ちょっと解説するが、要するにすげえ遠回りなのである。
 「箱崎まで行かなくても、五斗蔵か二又瀬から左折すればいいじゃん」
 「だってそっちの道行ったことないし」
 「箱崎は行ったことあるのか」
 「うん」
 「行った道しか通れないってなんだよ。遠回りして間に合わなかったらイミないじゃん」
 「……じゃあ、アンタが案内してよ!」
 「だからナビしろって言ったんだろ?!」
 なんだか出発から前途多難である。
 結局、五斗蔵から空港横を通って博多駅へ抜ける道は相当渋滞しそうだという判断で、二又瀬から左折する道を選ぶ。それならあとは一本道でサンパレスに着く。
 「二又瀬なら多分混んでないよ」
 「なんで?」
 「なんでって……勘だよ」
 「でもアンタすぐ私を騙すし」
 「今、おまえを騙して損するのはオレもだろ?!」
 「ホラ見てん、やっぱりいつも私を騙してるってことやん」
 なんだか会話するのがイヤになってきたので黙る。早目に出発したのだから、渋滞はそうひどくないはずだが、それでもスムーズに進んでいるとは言い難い。しばらく一車線の一本道なので、横道から入ってくる車や、先を走るバスや、信号なんかでやたらと止まる。ちょっとイライラが溜まりつつあったが、ようやく五斗蔵まで来て、車線が二つに増える。
 「よし、そこを真っ直ぐ」
 しげ、スイッと車を右車線に。
 「……あッ!」
 「……どうした?」
 「……真っ直ぐ行けん」
 「? どうして」
 「右にしか曲がれん」
 「オレ今、真っ直ぐ行けって言ったやん!」
 「だから、右と真っ直ぐと、両方行けると思って右に行ったら行けなかったんよ!」
 「……矢印ちゃんと見とけよ!」
 「見落とすんだよ! よく!」
 「威張って言うな! じゃあどうすんだよいったい」
 「……右に曲がったら左の細道に入って、グルッと迂回してもとの道に戻る」
 「……じゃあ、そうしな」
 信号が青になり、右にギュンと曲がるしげ。
 細道に入ってぐるぐる回らなくても、真っ直ぐ行って、Uターンできないものかと思って、そう言おうとしたら、しげ、左の細道に入らずにそのまま直進した。
 「……今の道、左に入るんじゃなかったのかよ!」
 「あッ! 忘れたッ!」
 「忘れたって、ほんの5秒前に自分で『左折する』って言ったんじゃんかよ!」
 「だから5秒前のことでも忘れるの!」
 「だから威張って言うなあああ!」
 ……もうずいぶん行数がかかりましたので、結論だけ書きます。もとの道に戻るのにキッチリ10分かかりました。
 そして福岡サンパレスに着くのにも1時間かかりました。
 若葉マークって、やっぱりスゴイです(T∇T)。


 駐車場がどこも満杯なのでなぜかと思っていたら、サンパレスの隣の福岡国際センターで大相撲九州場所が開催されていたのであった。なるほど、道端をおすもうさんがちょこちょこ歩いている。もう今は全然相撲に興味がなくなっていたので、九州場所が始まっていたことも忘れてたよ。
 なんとか駐車場を見つけて入りこむ。サンパレスの隣なだけあって、20分100円とボッている。少し離れると30分100円のとこもあるってのに。でもそちらに回って駐車できなかったら困るので、ともかくそこに停める。

 福岡サンパレスでチケットを引き換えて座席を確保。
 しかし開場は6時半なので、それまで時間つぶしのため、ベイサイドプレイスを散策する。
 ベイサイドに来るのも久しぶりだなあ。キャナルが出来る前はここまで足を伸ばして買い物することもあったんだが、近場で買い物が出来るとなれば、こんなとこまで遠出することはまずない。すっかりお見限りで、もう1年以上来てなかったんじゃないかな。
 波止場には見た目20メートルほどのでっかいクリスマスツリーがもう立てられていて、サンタの人形もあり、ここだけクリスマス気分になっている。
 でも港に停まってる船の名前は「きんいん」とか「おとひめ」で、純和風。ここもなんだかみょうちくりんなスポットだよなあ。まだ時間帯が早いのか、客の姿は殆ど見かけないので、ゆっくりと回る。

 ここへ来るといつも、私は中央の水槽柱を見ることにしている。水族館って好きなんだよ。多分、動物園の4.7倍好きだ。もしかしたらこれも『うる星やつら2』の影響かもしれないな(^.^)。
 でも余りにいつものことなので、しげは「また?」みたいな顔をしている。
 ウミガメが好きなので、まず真っ先に泳いでないか目で追う私。
 あの、前ビレを横に広げて泳ぐ姿の優雅さ、気高さよ♪ 『ガメラ2』でガメラがそうして飛んでくれたのが、どんなに嬉しかったか。『恐竜図鑑』で古代の巨大ガメ「アーケロン」がそうやって泳いでる絵を見て以来、私はウミガメフリークなのである。
 でも、なぜだろう、以前来たときにはいたウミガメ、今日は泳いでいない。岩場に隠れてるのかと思って柱の周りをぐるぐる回るが、いるのはウツボばかり。いやウツボも好きなんでそれはそれでいいんだが。
 「どうしたのかなあ、死んだのかなあ」
 不安げについ呟いた私に、しげが無慈悲なヒトコトを返す。
 「うん死んだ。死んでるよ」
 ……やっぱりこいつには「愛」はない。ううううう(TロT)。

 ベイサイドのモスバーガーで食事。ほかの店は軒並み高いので、給料日前で苦しい我々はこんなところで食うしかないのだ。
 『キネマ旬報』11月下旬号をしげに見せて、冬の映画、何が見たいかを聞く。
 「『ハリー・ポッター』は行くやろ〜? あとは『スパイ・キッズ』に『シュレック』かなあ」
 「『シュレック』? 考えもしてなかったな。どこに引かれたん」
 「……えーっと……声優?」
 「誰が出てたっけ?」
 「マイク・マイヤーズにエディ・マーフィ」
 「どっちもおまえが嫌いな俳優やん」
 「そうなんよ」
 「だったらなんで」
 「なんか、出てくる姫が昼はいいヒトで夜は意地悪いヒトになるって」
 「……なんじゃそりゃ。そんなんだったらオレ、まだ『アトランティス』見に行ったほうが面白いと思うぞ。あと『ゴジラ』とか話題になってるし」
 「……どこで?」
 どうせオタクの間でだけだろう、と言いたげなしげの目線を感じたので会話を打ち切る。そろそろ開場の時間だ。

 
 ドイツ・ザクセン=アンハルト歌劇場日本公演2001/リヒャルト・ワーグナー歌劇『さまよえるオランダ人』。
 生まれて始めて見る生のオペラ、しかも本場ものである。
 こんな場末の劇場じゃどれほどの音響効果があるか心許ないが、結構期待してしまう。
 S席と言うので前の方かと思ったら、Sでも結構後ろの方。おかげで両袖に立てられた字幕ディスプレイ、私の貧弱な視力では平仮名がかろうじて見れるくらいで殆ど見えない。字幕を一生懸命見るだけで時間が過ぎそうなので、意味が知りたいときだけ見ることにして、話はまあ、仕草や動きで解るだろうと見当つけ、舞台に集中する。
 音響はやっぱり劇場のせいで最低。上演前のトークショーで、演出のヨハネス・フェルゼンシュタイン氏が「ドイツのオペラハウス並だ」とリップサービスをしていたが、それがホントならドイツの本場、よっぽど貧弱な劇場しかないってことになるぞ。「ドイツは国立劇場ばかりなのに日本は芝居が民間で行われている、素晴らしい」なんて言ってたのも文化の遅れをバカにされてるとしか思えん。
 演奏は手抜きしてるとは思えないのに、ともかく胸に響いて来ないのだ。CD聞いてるのと変わらん。いや、オーディオ設備次第じゃ、CDの方が感動があるかもって言いたくなるくらい、反響がない。……東京じゃBunkamuraオーチャードホールってとこで上演したんだなあ。きっといい劇場なんだろうなあ。ただチケットなんで文句も言えないが、もちっといい劇場で聞きたかったよ。
 今「聞く」と書いて「見る」と書かなかったが、オペラは演劇的に見ればやはり歌舞伎と同じで様式のものである。現代劇のような微妙な人間の心理を表現するものではない。ともかく、ヒロインやたらと両手広げてるし。
 しげはその大仰な表現に、上演中、クスクスしっぱなしだった。
 芝居が終わって、しげが聞いてくる。
 「結局、あれ、どういう話なの?」
 「……つまり、『呪いのかかったオランダ人が7年に一度陸に上がって、そのとき貞淑な女に愛されたら呪いが解けるんだけど、せっかく見つけた女には昔の男がいて、裏切られたと思ったオランダ人は自分から去ってって、女は自分の貞淑を証明するために海に身を投げて自殺する』って話じゃないの?」
 「やっぱ、それだけ?」
 ホントに、たったそれだけのドラマに2時間以上かけてるのである。なにしろ歌は簡単に言えば「好きだ、愛してる、お前は運命の女」なんてセリフを延々言ってるだけだし。……ボケ老人の繰り言かい。でもこれ、ワーグナー30歳のときの作品なんだよねえ。途中、何度かウトウトしてたんだけど、ハッと目が覚めるとさっきとシチュエーションが全く変わってないし(^_^;)。
 「……要するに、これ、色既知外の男と、思い込みの激しい女の恋ってこと?」
 「そうなるよなあ。ずっとオランダ人に会えることを夢見てた女だってんだから」
 「でも、怖いよ、あんなにオランダ人の絵見て話聞いてただけで自分が運命の女だって思えるってのは」
 ……『ウルトラマンコスモス』のムサシ少年みたいなもんだな。「ウルトラマンは本当にいるんだ!」って。でも実際に「フライングダッチマンは本当にいるんだ!」って言い張るやつが現代にいたら、即日、どこぞに入れられてしまうだろうな(^o^)。
 で、面白かったかどうかってことだけど、もちろん面白かったのである。トンデモ芝居だってことで。

 帰宅すると疲れてそのまま睡眠。おかげでまた日記が書けず、更新が遅れる。……追いつける日は本当に来るのか?(-_-;)

2000年11月16日(木) 風邪がまだ治らんがな



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