委員長の日記
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2004年04月15日(木) 本当のことを知って欲しい

私のパソコンには、4月8日以来、連日のように、イラクで拘束された日本人の方達を心配し支援していらっしゃる皆さんからのメールが、昼夜を問わず送られてくる。
そのメールを見るたびに、励まされ、また自分に何ができるのだろうかということを問いかけている。
事件は一向に進展を見せず、その理由が何であるのかその真相は明確ではない。
私達の知らないところで、もっと大きな力が動いているのかもしれない。
しかし、人間として、今、明らかに生命の危険にさらされている人たちのことや、その家族に対して、誹謗中傷をしたり、嫌がらせをしたり、あろうことか、それを個人のレベルではなく、衆人の目に触れる週刊誌までが扇動している。
これが、3人が、無事に帰国し、そのことに対して釈明できる状態であるならばまだしも、本人達が何もできない状況でそのような行為に及ぶということは、欠席裁判にも等しく、民主主義国家としてはあるまじき行為だと思う。

以下は、そのたくさんのメールの中から、今日、私の元に送られてきた1通の転載です。

*********以下転載*********



 JVCの佐藤真紀さんから来た、高遠菜穂子さんについて書かれたメールをそのまま掲載します。一部の心ない方やメディアが、高遠さん達を中傷していますが、なぜ、そういうことをするのか、私には理解できないし、理解しようとも思いません。高遠さんの活動をよく知る佐藤真紀さんの文章を読んで、そういう中傷がいかに不当なものであるか知ってください。


皆様、事態が解決しないので疲労が蓄積しています。
高遠さんが今までもファルージャの人々のことを一生懸命考えていたことをファルージャの人々は思い出してほしいです。(転送可)



【高遠さんと一緒にファルージャの病院を支援したときのこと】


佐藤真紀 日本国際ボランティアセンター


 昨年の5月だった。バグダッドが陥落した直後の救援活動もひとだんらくしたころ当時泊まっていたアルハムラホテルには、ジャーナリストが訪ねてきたりしていたが、緊急状態が終わるとぴたりとそういった来客も途絶えた。かわりに何かボランティアで手伝えないかという若者たちがちらほら尋ねてくるようになった。そんな中に高遠さんがいた。みんなで話しているうちに、停電になった。夜は銃声が聞こえて危ないので朝方まで仮眠を取ることになった。

 高遠さんは、いつも何かを訴えていたし怒っていた。「30になったらボランティアをしようと思った」そしてカンボジアのエイズホスピスやインドのマザーテレサのところでボランティアをしてきた。「インドやカンボジアで子どもたちが待っている。戻らなくてはいけない。でもイラクは気になる」といっていた。

 彼女はいろいろな話を持ってきた。7月には、「ラマディ、ファルージャは大変なことになっていますよ。モスクは破壊されるし、戦争はまだ終わっていない。米軍が封鎖してしまい、外からの物資が入ってこない。病院には何もなかった。NGOも怖がって入らない」バグダッドでは復興に浮かれて多くのNGOが活動を開始していたし、なんとなく人道支援を掲げた、いかがわしいイラク人によるNGOなども出来ていた。

彼女は、いつも一番困っている人に目が行った。
 そこでぼくたちは相談して医薬品を若干買い込んで、病院に届けることにした。ファルージャは緊迫していた。町に着くなり住民が群がってくる。アメリカ人の蛮行を訴える人たち。


「米軍はモスクを攻撃したんだ」

家に案内してもらうとサダム・フセインの肖像画を大切に持っていた。ここの人たちは、未だにサダムを崇拝していた。バグダッドではそういった類のものはすべて破り捨てられていたのに。

 病院でも米兵の横柄な態度に、苦情が寄せられていた。ヘリコプターは低空飛行し時折ジープが行き交う。
 薬を届けると早々にバグダッドに向かうことにした。

 途中、米軍のジープがわれわれの車を追い抜いたと思うと、銃を向け、止まれと合図をする。
車が止まると短銃を構えた兵士が、何人か降りてきて、私たちを調べだした。
何でも、どこからか通報がはいったという。
大声で叫びながら銃を向ける米兵。
私がイラクにいて一番恐怖を感じたのはこのときかもしれない。

このような状況だから、誰も怖くて近寄れない。だからこそ、高遠さんは援助が必要なんだと言っていた。

 もうひとつ彼女が力を入れていたのがストリートチルドレンの保護だ。


「アンパンパトロール!」

といってホテルの前でシンナーを吸っている子どもたちからシンナーを取り上げる。体を張っている。

「シンナーを取り上げたら噛みつかれました。」

彼女の腕には歯型がついている。それでもうれしそうに子どもの描いた絵を見せてくれる。

「蛇を書く子が多い。何か深い意味があるのかしら」
「蛇は蛇でしょう」


 ちょうどフランスのNGOが子どもの施設をつくっていたので彼女を連れて行ったことがある。

「ここでボランティアしてみたら?」

そして私は日本に帰国した。
 その後、8月19日に国連の本部が爆破された。高遠さんも国連の事務所にはインターネットがあるので良く通っていたので安否が気づかわれたが無事だった。その後私たちはすれ違い、会うことがなかった。

 今、ファルージャは昨年7月よりももっとひどい状況だろう。米軍に封鎖された町は600人以上が殺されているという。人々は病院にいくことも出来ず、治療も受けられない。緊急救援活動が必要だ。川口外務大臣が、アル・ジャジーラでイラク国民に呼びかけた。


「(日本は)今も、多額の資金と人員をもってイラクの復興に取り組んでいます。我が国の自衛隊もこのために派遣されているのです。」

しかし、ファルージャの人々には全く意味がない。人口1%のサマワの人だけが自衛隊の恩恵を受けているだけだ。
 高遠さんは、ファルージャの人々にも目を向けていた。一番困っている人は誰か、直ちに情報を集める能力に長けている。
 そんな高遠さんの力が必要なのに彼女は皮肉なことにファルージャで人質になっている。

以上。


委員長