終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2008年09月08日(月)

髪の長さは
第一に、それは営々として伸び続けてきた生き物の時間だ。
生き物の髪の長さはひとつの、意識下の指標となるのだ。

男、あるいは女たちが備える長い、長い髪は、
光沢ある時間、波打つ時間、その限られた長さで永遠を示唆する時間だ。
女たちであればその胎が与える過去から未来へと世代をつなぐ力だ。
それは呪術であり、純粋に美であり、暗示であり、そのすべてだ。

剃り上げられた頭が示すのは過去との断絶。
過去を持たぬとは出自を持たぬことであり、
出自を持たぬことはそのまま尊厳を持たぬということであったがゆえに、
剃り上げられた頭は尊厳なきもの、すなわち奴隷のものだった。
あるいは過去を持たぬことはあらゆる社会の軛を放たれてることを意味し、
それゆえ剃り上げられた頭は神官や僧侶や魔術師のものであった。

だからバトーがなぜああした髪をしているのかということについて、
わたしまだ今も考えている。
脳以外はほぼすべてが機械からなるバトー。
では彼の髪もまた彼が選択したひとつのシンボルに過ぎない。
彼はなぜ、自身に肩ほどの長さの白髪を与えたのだろう?
それは彼が己に許した歴史であったのだろうか?
それとも望んだかあるいは望まなかったかする出自や過去だったのか?

バトー、もしもわたしがわたしのために、
ある長さの髪をあつらえることを許されたとしたなら、
わたしはどういう長さの、どういう髪を用意するだろうか。
おそらくは、砂漠の砂の連なりを思わせるほどの、
私自身を幾重ねも巻き込み包み込み世界のあらゆる光から隠すほどの、
そうした無限の長さの髪を、きっと求めるだろう。


-



 

 

 

 

ndex
past  next

Mail
エンピツ