終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2008年06月23日(月)

水の無限

これはいったいどういうことだろう?
と、私はしばしば問いかけるのだが、このときもそうだった。



真昼、海上を行くシーカヤックは観光船とは異なる視界をもたらす。
アイヌが見たままの知床、流氷と火山の作った崖。
ドン・エンガスよりも泥くさく、力強く、
凝った叫びか、振り上げたまま落とし所のなかった拳の流れ着いた先。
まあちょっとそんなふうに見える場所。

さてそっから知床五湖へ。
あっちこっちに「クマ注意」の札だらけ。
暗い湖水は眠りのようだ。悪夢にうなされた眠りのようだ。
これらの湖には注ぐ川も流れ出る川もない。




夕刻、知床峠を越えた。
山頂はまだ冬で、そして山裾は春だった。
初めて桜を見たような気がする。
確かに、初めて見た桜だったのだ。
日本人が山々に、初めて見た桜だったのだ。
このようにして新緑のうちに灯りのともったよう、ぼんやり咲くさまを。
そして女神を見たのだ。あるいは単に神性を。
色彩とは、そうだ、奇跡だ。奇跡だったのだ。そもそもの初めには。




さあ、これでおしまい。
ずいぶん長くかかったね。


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