終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2008年01月14日(月)

 ジンニーアが語ったことがある。それは彼女がまだ将軍の誉れの杖を受け取るより以前、まだアル・シムーンの半ばほどしか背丈のなかった頃だ。十に足りぬ少女ながら、凍てついた双眸と黄金の川のごとき髪はすでに後年の恐るべき美と恐怖を種子のごとくにはらんでいた。
「わたしは見たとおりのものではないのに違いない」
 少女はアル・シムーンの膝に身をのせ、間近にその顔を見上げた。
「わたしはおそらく、なにか別の生き物なのだ。この身れを容れるにはあまりに小さすぎる。この声はその歌を歌うにはあまりに小さすぎる。この心は」
 少女はアル・シムーンの首に幼い腕をめぐらせ、ぴったりと寄り添った。常にないことだった。不安な鼓動は触れたところから伝わってきた。
「この心はいつか狂う。それとも、もう狂い初めているのかもしれぬ。それはあまりに激しく愛し、憎む。古い琉璃の器が層なして欠けゆくように、わたしはいまこのときにも欠けていく。わたしはいつか、狂う」
 その不安な魂をアル・シムーンは抱きとり、捺されたように、己の心がこの姫に向けて深い愛情を感じているのを知った。


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