- 2007年12月14日(金) 夜の湿気と風がさびしくいりまじり 松ややなぎの林はくろく そらには暗い業の花びらがいっぱいで わたくしは神々の名を録したことから はげしく寒くふるえてゐる 宮沢賢治「業のはなびら」 ふとこの言葉を思い出したのには理由がある。 岩手へ旅したその夜に、ひと風呂浴びてから宿舎の外に出た。 気温はまさに氷点下。星空を見に出たはずだった。 雲の影も見えぬのに、空はただひといろに暗黒。 梢の影だけがなお暗く、夜の風にからからと揺れていた。 おいおい、ここは岩泉だぞ、花巻じゃない、と言いそうになって 誰に言えばよいのかもわからずに言うのをやめた。 空には確かに業の花びらが満ちていて、 それと同時に、どこか遠くで、耳には聞こえぬ叫びが上がった。 それともその叫びはとくからあって、私がそのとき気付いただけか。 神々の名を、わたしはいつ記したのだろう。 そんなふうに思った。 -
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