終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2007年11月19日(月)

愛するにはあまりにも


そしてかれは言った。

「わたしはひとつの川だ。
 だが流れ注ぐべき海はどこにあるのか。

 この波頭のすべてをかけて奔騰しなだれをうち、注ぐべき海は
 群れ遊ぶ子らさながら楽しく波立ち騒ぐ水面に溶けるべき海は
 どこにあるのか、この世界のどこにあるのか。

 わたしはさながら空を持たぬ翼、闇のない明かり、問いのない答え。
 奇形の臓器のように用なさぬこの川を、いったいいかにしよう。
 天へ昇らせるか、地へもぐらせるか
 流れ注ぐべき海を見出せぬままに」

かれが言葉で言ったのではない。
ただそのまなざしで、わずかな仕草でそのように語ったのだ。
わたしもそのように答えた。わたしたちはいつでもそのように語った。

「かれはひとつの川だ。
 海を恋い、海への想いにひかれて垂れて落ちる。

 かれは恋い、かれは慕い想う。かれの恋は完全で欠けるところがない。
 ただ、海がそこにないことだけをのぞいては。

 かれは空へ昇るか、地へもぐるだろうか。
 あるいはそうかもしれぬ。
 かれが自らのうちに海を見出すことがなければ。
 かれが自らのうちに海たらんとする可能性を見出し、
 静まって凪ぎ、その水面に天を映すことがなければ。

 しかり、そのときかれは天へ昇るか地へもぐるだろう!」


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