終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2007年10月23日(火)

 古い祈りの言葉のように、あなたは。

 わたしは火星の青い夕暮れのなかで、寒さに上着の前をかきあわせた。もうすぐ冬になろうとするコロンビア・ヒルズの斜面からは遠く、巨人たちの長い足のような竜巻が幾つもメリディアニ平原をよぎっていくのが見えた。
 キリンたちはどこにいるのだろう、とわたしは考えた。かれらは私のように物好きではないし、砂嵐や竜巻に対しては大いなる恐れを抱いているからきっとどこか赤い丘の斜面の影に隠れているのだろう。
 わたしは丘を下り始めた。足元でもろい石が砕けて塵にかえっていく音がした。ごつごつとした足場に苦心惨憺、ようやく平らな砂地に下りたときには薄く汗をかいていた。空はそろそろ暗くなりつつある。すっかり暮れてしまえば身も氷る夜の始まりだ。わたしの足は自然に急いだ。
 どれほど歩いただろう。振り返ると、どこからあらわれたのか、白黒まだらの美しいキリンが一頭、丘の前に立ってわたしの方を見ていた。その眼差しは底知れず深く冷たく、人間などよりもっとずっと高いところから天地を見ている生き物ならではと思わせた。目があったのはほんの一瞬だった。キリンはゆっくりと歩き出し、私もまた家路を急がねばならなかった。


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