終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2007年09月25日(火)

 夜は静かにふけ、茶屋の内も外もしんと静まり返ったころ、祐介は音もなく部屋を出た。この夜かれを買った若い男は、すっかり満足して高いびきの有様だったから、それはさして難しいことではなかった。

 かれがこの茶屋に売られてきてから、もう1年が過ぎた。もともと花街の人間とはいえ、三味線を身過ぎ世過ぎのたつきにしていたかれが茶屋に売り払われたのには相応の理由があったが、そうしたことはことさら問題にされなかった。茶屋に売られてくるにはいかにも遅すぎる、かれの三十路を一つ越えた年齢さえ問題にはされなかった。茶屋の主人は言ったものだ。
「問題はなァ、おめェがここでやっていけるかどうだ。俺っちは構わねえ。稚児買いの客と違って、野郎買いの客は年齢なんてのは気にしないってのも多い。だがそういうのに限って乱暴なのが好きでなァ。おめェ、年季が明ける前に、十中八九はお陀仏か、運良く死ななくともちっとおかしくなるかするだろうよ。気の毒だがな」

 とはいえそもそも選択肢はなかった。ずいきのがらを尻に含まされて耐えがたい掻痒感に身も世もなく泣き、男の陽物を慰めるあらゆる手管を仕込まれるほかなかった。そしてひとたび店に出れば、老若あらゆる種類の好色な視線に耐えその手に耐え、かえって奉仕するよりほか。
 ひんやりした夜の空気はすでに秋だ。両手を袖にしまって、祐介は廊下を歩き、障子をを開け放したままの縁側に立った。逃げることはもとよりできない。ただ月の光を浴びたかっただけだ。かれは欄干にもたれて腰を下ろし、中空の丸い灯りに見入った。
 店主の予想を裏切って、稚児上がりの野郎のどことなくなよっとした雰囲気に比べ、つい先頃まで男として世間を知っていたからか、祐介には訳知りの年寄りが客につくことが多かった。ねちこい愛撫には閉口しても、乱暴をするわけではない老人は上客と言えたが、今夜の客は違った。男を相手にした経験があまりないのか乱暴で、どうにか中途からはこちらが主導権を握ったからよかったものの、それでもこうしてみるとあちこちが痛んでいた。あざの幾つかはしばらく残るだろう。しかもある種の客は傷やけがを見ると自分もつけたくなるらしい。これからしばらくは生傷が絶えないことだろうと祐介は考える。
「やっぱり…生きては、出れねェかねェ」
 ほつ、と祐介は呟いた。そのとき、
 背後ではたりと足音がした。はっと顔を向けた祐介は、廊下の奥に若い男の陰をぼんやりと見つけ、いささか慌てて立ち上がった。
「ごめんなすって、旦那。ちょいと風にあたりに出ただけでさァ。お目覚めだったンなら、すぐ戻ってりゃァよござんした。今、すぐ…」
 そこまで言いつのって、祐介ははたと言葉を止めた。立っているのは今夜の客ではない。凍り付いたように立っているのは。
「旦那ァ…、なんだって、こんな所に…」
 見間違うはずがなかった。立っているのは西園寺の若い当主、かれがその身を売られるもととなった想い人、その当人だった。



某シチュ茶で旦那と太鼓持ちでエロ茶やった後日談ぽく。
太鼓持ちは、花魁芸者をさしおいて旦那寝取ったというので、
置屋の女将にすぱーんと売り飛ばされて陰間をやるはめになった。
旦那は太鼓持ちを探すもののなかなか見つからず…で1年後、と。
初物いただいた時と、男相手を仕込まれた陰間の体と、
そのギャップに気持ちよくなりつつ煩悶するといいよ、旦那…。


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