- 2007年04月15日(日) お定まりのくだらないアンケートだった。その一角に、嫌いなものという細い欄があった。僕は少し考え、指先をなめて、いつもの冗談の代わりに正直な答えを書いた。なに、ただの気まぐれだった。それが証拠にそれがもうどこの雑誌のものだったかも覚えていない。それとも新聞だったのかも。 『病気、死』 僕はどうすればいいのだろうか? その両方が突きつけられて。しかも僕のものではなく、長年の同僚のそれが。しかも思わぬ時節に。僕らはついこのあいだ、出直したばかりだったのに。そうだ、まっさらな気分で。 「なにか言ったかい?」 フレディ・マーキュリーが言った。僕は黙って首を振り、かれの目を見ないようにして楽屋を出た。そうだ、プレシジョンを起きっぱなしのままで。リハーサルまでもう1時間もないというのに。 「ジョン」 部屋を出て数歩も行かないうちに呼び止められた。僕は足を止め、しかし振り返らなかった。どうしてこんなときに限って誰も通りがからないのだろう? ブライアンかロジャーか、メアリーかマイクか。ともかく誰か。昨日入ったばかりの間抜けな新入りのアルバイトだっていいのに。 「ジョン」 再び名前を呼ばれて、僕は振り返った。かれは言いにくいことがあるときの顔をしていた。つまり用心深く、だが誠実で何事か考えている顔だ。僕は叫び出そうかと思った。叫んでしまえばよかった。きみはあの病気だ、きみは遠からず死ぬ、きみは死ぬ! だが言わなかった。理性はまだ濡れ落ち葉のように僕の足の裏に張り付いているのだ。それでよかった。 「…ジョン」 「聞こえているよ」 「気づいたね?」 どう答えればいいのか、誰かに教えて欲しかった。教えてもらえるなら何千ドルだって積んだだろう。二十年来の同僚にどう答えろというのか。 「信じているよ、ジョン」 それだけだった。僕は置き去りにされてしまった。責めることさえできないのだ。そんなことはもちろん考えてなどいなかったが。僕は自分の手を見た。指先まで震えていた。リハーサルまで1時間しかないというのに。 -
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