- 2007年04月16日(月) Save Me: 結局、僕は誰にもそれを言わなかった。かれが僕らに打ち明け、次いで全世界に打ち明け、そして逝ってしまうまで。そのことを思い出せるようになったのさえ最近になってからだ。それほど病と死の影への恐れは深かった。 ふとかれの思いに考えを致したとき、僕は胸を突かれた。病と死をだれより恐れたのはかれだろう。あれほど生きることを楽しんでいたかれだもの。生きることを愛したかれ。しゃれめかしてパーティーに出かける後ろ姿に、タイツを着込んで舞台へ飛び出してくる笑顔に、メアリーと(あるいは他の誰かと)抱き合うその姿に、それを感じないことなどなかった。 それでもかれに逃げ道などなかった。あの夕食の悲しい告白のとき、かれはこともなげに言って、そして新しいアルバムを作ろうと言った。それはつまりかれが、最後の日々をQUEENとして、僕もまたその四分の一である一つの生物として過ごそうという決意だった。ソロでも輝きを放ったかれ、モンセラとともにあの輝かしい音楽を作り出したかれが。ジム・ハットンとあるいはメアリーと、引きこもって暮らすこともできたかれが。 僕はただ病と死への恐怖に打たれて、恥ずかしいことにたびたび逃げだしさえした。僕はかれと二人でいることさえできなかった。だが本当は、本当は言うべきではなかったのか。きみが、きみがもっとも君らしくあれるものと言ってくれたQUEEN、最後の生命の一滴を注いでくれるというこの音楽の一員であれたことをなによりも感謝していると。僕もまた、この巨大な獣、ときとして憎み恐れたこともある獣、僕らそのものでもあるこのユニットに最後の命を吹き込もう。白鳥の歌をうたわせよう。きみの声で、と。 だが僕はそうしなかった。僕は間抜けな顔を伏せて、一人で空気を暗くしていただけだ。きみが命尽きようとしながら、あんなにも歌っていたのに。そしてブライアンとロジャーがそれに応えていたのに。 こうした取り返しのつかなさを、どうすればいいんだろう。せめてきみが生きている間に気づけばよかった。そうでなければ葬儀までに。きみが逝ってしまってからもう何年たったのだろう。世界は驚くほどの勢いで変わっている。きみがいなくても世界は回っている。どうしてこんなことが信じられるだろう? きみは世界に君臨する王者のようだったというのに。 後悔は先に立たない。僕は真夜中のスタジオでベースを手にとる。電子機器の小さなランプが無数に闇に点っている。タイトなリズムでベースを鳴らそう。きみはもう歌うことがないが、だが僕がどうしてきみの声を忘れよう。ブライアン・メイのギターが、ロジャー・テイラーのシャープなドラムがありありと蘇ってスタジオに満ちるまでそれほどかかりはしない。 さあ、歌おう。これは魔法だ。そうだ、きみが言っていたとおり。僕らの音楽は、ときに辛すぎる現実からほんの少し解き放たれるための魔法だ。 -
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