終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2007年04月10日(火)

アイ・ニージュ:

 錆びたステンレスの流しに叩きつけられたワインの壜は砕け散って、緋色の滴と無数の琥珀色した硝子の破片をそこらじゅうにまき散らした。
「それで?」
 汚れた壁をさらにワインで汚して、かれは言った。その眼差しは鈍色に光る雨に濡れた鉄のように冷ややかに粘つき私に張り付いていた。そして私はといえば、こうしたときに何を言うべきかをいま学校では教えていないが、むしろ必須科目にするべきではなかったかとぼんやり考えていたのだった。
 そうだ、確かに学校ではこうしたことは教えていない。1つの愛の終わりがどのように来るか、またどのようにそれを迎えるべきかということを教えていない。だがそれは必要なことではないのか。でなければこんなふうに、のっぴきならない場面に落ち込んでしまうことになりかねない。

 こんなふうに。

 明らかに彼の問いは文字通りに受け取ってはいけないものだった。とりわけてぎざぎざに光る不揃いなふちを突如として生じた壜の半分が彼の手の中にある今は。私はこのとき一瞬たりとも彼を信用しなかった。
 身の安全を預けられる相手ではなかった。つまりこれが愛の終わりかと私は自分に尋ねた。愛とは幻想か、でなければ絵空事だった。昨日まで信じていたことがこうもきれいに消え去るとは。もっともそんなことをのんびり驚いていられる場面でもなかった。私は彼を見た。
「驚いた?」
 私は自分の声がひどく冷たいことに驚いた。私の目つきも冷たかっただろう。夜の犬小屋の屋根のように冷たかっただろう。誰もいないプレハブ倉庫のようにまた船のつかない波止場のように冷たかっただろう。私は自分がそんなにも冷たい声や目でありうることに驚いた。
 もっともそれはまずいことでもあった。必要なのはこの場を逃れる方便だったのだから。そこまで考えて、私は自分が牙を剥いた犬かささくれだった木の皮のような気分でいることに気づいた。捨て鉢とはこういうことかと。
「それじゃあね」
 私は彼に背中を向けた。刺されるだろうかという不安は冷たい滴のように私の胸を滑り落ちて、そして捨て鉢な音をさせた。私は結局、扉を出て階段を下りても刺されず、彼は多分、身じろぎもしなかったのだろうと思う。


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