- 2007年01月30日(火) 氷雪は我が手足を噛む。 人の世を離れてさまよい歩く男を餌食にしないときには、とマルチェロは白く凍えた手に息を吹きかけながら考えた。白狼の群れにも似たこの寒気、この雪嵐はなにを食らって腹を満たしているのだろう? そのとき雪に陰り雪に明るむ薄日の向こう、青ぐらい穴を守る一群の氷牙がきらりと光った。 厳冬の穴はひやりと冷たく、だが少なくとも風と雪は届かなかった。マルチェロは黙って滑らかな洞の隅に蹲り、そのとたんに鈍った手足と瞼の上に張り付いてきた眠気に慌てて頭を振った。だがそれは、瀕死の鹿ののど笛に食らいついた犬のようにどうにも振り払いようもなく、やがてマルチェロのおぼろな意識ははうつつと夢の境界を漂い始めた。 俺は夢を見ている、とマルチェロはぼんやりと考えた。そうでなければ、あの方がここにいるはずはない。なぜならあの方は、オディロさまはすでに亡くなられた。あの慕わしい白髪も、穏やかで澄みしかも真実な眼差しも、とうに失われた。末期の苦しみにこわばった手指を組ませたのは誰あろう、この俺ではないか。そしてまた、とマルチェロは考える。これが夢でなくば母がここにいるはずもない。記憶の彼方にはや薄れつつある豊かな巻き毛、この胸にやるせない悲しみをかき立てる深い緑の瞳。やさしいアルトの声で呼ぶ、マルチェロ、わたしの子。わたしの愛する子。 それではなるほど夢であった。だがマルチェロの胸は憧れで満ち、満ちた涙は豊かにあふれ出た。おふれた涙は汚れた外套にしとどに落ちて、落ちるなり氷った。それでもなおマルチェロはこれを夢と知っており、それゆえ、愛し慕うその2人のうちどちらの名を呼ぶこともできなかった。 せめてこれを信じられたら、一瞬でもいいこれを真実と信じられたら、とマルチェロは切り裂くような悲しみのうちに思った。だがそうした力は与えられるものではなく、また与えられもしなかった。 マルチェロが我にかえったとき、あたりは夜で、すでに吹雪は止んでいた。 死ぬほど腹が痛いので、早引けした。よく考えるともう一週間も便通なし。そりゃ腹も痛くなろうってもの。あーしまったキューピー腹だ…(涙) ピンクの小粒はもう死ぬかと思うほど腹痛をもたらすうえ半日は仕事にならなくなるので避けようと、薬局に行った。すすめられたのは… イチヂク浣腸 マジ?ほんとに?(涙)やめてくれ…。 それはなんというか、ええと、超えてはいけない一線だろ…? しかし私の目の前には青に白十字の小箱がある。 ピンクの小粒か、浣腸か。脂汗が…究極の選択とはこのことだ。 どうするにせよ結論については聞くな、聞いてくれるな。頼む。 -
|
|