終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2007年01月29日(月)

終わらざるは

 マルチェロは力尽きて水辺に眠り、夜半に凍えて目覚めた。震えながら見渡せば、大地は月光に白くきらめいて、凍てついている。もらした吐息もまた白い。もやいを解かれた小舟が水面に漂い始める暁まではまだ遠かった。
「……」
 こごえた両手をすりあわせ、マルチェロは身を丸めて破れ汚れた外套の裾を引き寄せた。そこらの石か土ほどに、体は骨までも冷えている。なるほどこのようにして人は死ぬに違いないとさえ思われた。
 それでも冷たい目で、マルチェロは水面を見た。暗い川は耐えがたいほど緩慢で、流れることに飽いたかとさえ思われた。そして音もない。そうだ、あたりはしんと静まりかえり、世界の一切が聾唖となったようだった。こうした沈黙の中では時すら流れまい、とかれはぼんやりと、だが鋭く思う。
 それは、ある意味で真実だった。かれは確かに朝をもって小舟に船出し、ある夕べに遠く聖地に至り、また神々の前にぬかずいて和解の涙を流しもしたのだが、それにも関わらずかれは思うことがあった。あの遠い冷たい夜、寂しい静かな岸辺にこの瞬間もわたしは座り、凍えているのだと。
 それを聞いたククールは、そういうこともあるだろうとだけ言った。しかし心のうちでは、この兄の心の奥底にまでも分け入って、その岸辺に座り続ける兄を訪れ、抱きしめ、ぬくもりを与えることができればと思ったのだった。


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