- 2007年01月18日(木) 死は眠らない。彼女はいつも陽気で、とぼけたしっかり者で、ちょっと小悪魔的な魅力がある。彼女は通説に反して美しい。これについては長兄たる運命がかれらしからぬ親しげな微笑とともに言ったことがある。 「思うのだが、人は死をおまえのようなものだとどこかで信じているのだ。かれらが常々言っていることからすればいささか奇妙ではあるが、つまりそういうことなのだろう。おまえはそのようでなければならず、そしてかれらはそのようにいわねばならないのだ」 いささか冗漫なのは運命の常、と三差路のヘカテなら笑うだろう。そして死もまた兄の言葉を聞いて笑った。陽気であけっぴろげな笑いだった。 笑い。かれら終わりなきものたちはよく笑う。たとえば私の小さなペンダントのように笑う。それは銀化しみどりがかったガラスで、たぶんローマの時代ほど遠くからきた。時と海を超えてわたしのもとへ。そしてまたどこか遠くへと立ち去ってゆくのだろう。 それはわたしの胸元で笑う。しばしば笑う。それは言う。 「わたしはキリストに先立って炉に生まれた。シーザーが殺害された日、わたしはある貴族の家の食卓の上にあった。多くの人間がわたしを所有したといったがかれらは消え去った。ローマの栄光、イスラームの日々もまた! なんじら短命の種族よ」 しかしながらそれは笑うより多く歌う。物質より多く歌だ。それゆえ私は胸元に、ひとつの古い誇らかな歌を下げているといえる。 いつか死が私を訪れたとき、この話をしよう。彼女は笑うだろう。 -
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