- 2006年07月28日(金) 今の俺を例えるなら、と、トキオは考えた。 例えるなら、甲子園をかけた決勝戦で序盤に打線が5点とってエースは調子よくて、ああもう自分の出番はないなとぼんやりしていたリリーフエースが、九回裏いきなり1点差まで詰め寄られてなおも二死満塁の場面でエースに代わらなきゃいけなくて半泣きになりながらマウンドに上ったけどやっぱり打ち込まれてサヨナラされて負けて、チームは甲子園行けなくてみんなオイオイ泣いている中で呆然として立ちつくす、みたいな。 ちょっと長いけど、トキオはつまりそんな気持ちだったのだ。自己嫌悪と絶望と、ああ終わってしまったなという自虐的な爽快感の入り交じった。 「さて、そんなにいつまでも目をでっかくしてると落ちるぜ」 そんなトキオの前で、ハルオはそう言って、ひどく面白そうに笑った。ハルオの手の中にあるのはトキオのナイフで、鉛筆も削れないような華奢な代物だったが、それでも大きくてたくましいハルオの手の中では、白く鋭く光って牙のように見えた。 「こんなもの持ち出したのはおまえなんだからな」 -
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