終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2006年07月11日(火)


 少年は帽子のつばに「真っ向勝負」と書いて、
 そのあと「負」という字を消した。
 そのことは考えたくなかったからだ。

 そしてマウンドに向かった。



 にもかかわらずきみはいま、そのことばに直面している。しかもそれは消しようもなく巨大となって迫り、そして君は否応なく逃げられない。なぜならエースナンバーを背負うとは、まったくそういうことだからだ。
 空は真昼、だが梅雨はまだ明けない。灼熱の夏の日差しはきみのためにはとっておかれなかった。時折こまかな雨の注ぐ曇天がきみの舞台だ。そして敗北は差し迫っている。その後を考えたこともない敗北が。

 きみは敗北に向き合って立ち、そして愕然として思い至る。英雄となるということは敗北を肯うことだと。この苦い杯、次第に大きくなる影を肯うことだと。
 牙をもって抗うことはできない。敗北はそうして立ち向かいうる何かではないからだ。だがきみは抗うことしか学んでこなかった。その牙がおかれたとき、どうすればいいのだろうかと君は問う。答えはなく、どこにもなく、どこからもなく、しかも答えねばならない時刻は迫っている。敗北は待つということを知らないからだ。

 きみはついに敗北を飲み込む。きみに代わって飲み込みうる誰もおらず、きみはついにそれを避けることができない。それに、そうだ。きみはエースナンバーを背に負っている。きみは苦悶しつつ敗北を飲み、そして見る。
 きみが何を見るか、見たか、私は知らない。わたしは君ではないからだ。きみはただそのとき、大きな悲しみと、負けるということを知った。そうだ、きみに先立つ無数の少年たちが知ったように。


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