- 2006年06月08日(木) 心のこもった贈り物をもらうと、どうしてこんなにうれしいんだろう 楽の音が鳴り響いている。マーリドは黙って炎を見つめ、居並ぶ人々の談笑を聞くともなく聞いていた。砂上に敷かれた絨毯が宴の席であり、頭上に輝く無数の星が宴の屋根であった。そして囲いの中に在ることを恥とする砂漠の部族の集いに壁はない。 マーリドはふと顔を上げた。気づかぬうちに傍らに座を占めていたのは、昼に行き会った赤皮のムダールの若い騎士だ。まだ少年といったがいい顔立ちには槍の穂先のごとく鋭い目が輝いて、マーリドを見ていた。 「何用だ」 「話をしたい、名高いマジュヌンと」 「昼にはその名は顧みられなかった」 「夜は昼の言葉を消す」 理不尽とさえいえる少年騎士の強い言いようにマーリドは微笑し、立ち上がった。炎の傍らの詩人の座が空いたからだ。 「話をしよう、だが後で」 マーリドは若い騎士に告げて、進み出た。 砂漠の黒い木を目にせしか ジムマーンの裔よ、砂漠の民よ 自由の血を引くものども、砂漠の黒い木を目にせしか されば立て、立ち集い敵に向かえよ されば剣を取れ、戦い殺せ勇みて屠れ 赤い死を恐れるな、一命を軽んずべし まこと一命を軽んじること偉大なる日、合戦の日に 然り! 合戦の日、戦いの時、殺戮と死の刹那に ジムマーンの裔よ、我らは相出会う 歌は鼓の重い響きを主弦に歌われた。そしてマーリドが歌いやめたとき、辺りには最後の二句が熱狂とともに繰り返されていた。それは次第に高まって、一座はまだ流されぬ彼我の血にすでに酔う気配であった。 -
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