終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2006年05月03日(水)

夏はあなたに属する

1:
 わたしの夏はすべてあなたに属する。


 それはあなたによって初めて到来し、
 あなたによって初めて意味を得た実体ある概念だ。

 いま年ごとに巡る暑熱の季節はすべてその残映であり繰り返しであり、
 ひとつの永遠から発する消えないこだまの一部である。

 
 私があなたを愛していたかどうかはすでに定かでない。
 記憶とは常にあいまいで身勝手な思いこみにすぎず、
 現在もまた気分によって色形を変える玉虫色の幻影にすぎないからだ。



2:
 繰り返そう、わたしの夏は、すべてあなたに属する。


 これは、かつて起きた一連の出来事か人物におそらく発するにしても、
 もうそれとは関係のない次元で私自身の一部と化した
 ある信仰、ある信念についての告白である。

 
 夏を過ごすことはあなたを思うことと同義だ。
 夏の中にあるとき私はあなたに取り巻かれている。
 木漏れ日やわずかな風さえ例外ではない。
 グラウンドに立つすべての少年はあなたのゆえに愛しい。

 そこにはまだ少しの痛みがあるが、
 いつかはそれもすっかり消え去って、私はあなたのことを忘れるだろう。
 しかもなお真夏の季節ごとにわたしはあなたに取り巻かれる。



3:
 これは愛の告白やその類のものではない。


 一つの愛着がどのようにして拡散し、深く世界にしみ通るのか、
 初め概念と事象の羅列にすぎなかった一連のものに、
 いかにして血が通ってゆくのかについての覚え書きだ。

 このような経過を経た愛着や感情の裏付けに預からなかったものは、
 本当には見えやしない、わかりやしないのである。

 世界を確かに見据えようとするなら、何度か愛を失う必要がある。

 人間は傷によって、血を流す生傷によってのみ目を開く。
 無難な人間ほど盲目でいるものはない。



 まあ、わかりきっていることだが。


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