- 2006年01月31日(火) 死にかけた戦友の喉につまった血が嫌な音をたてる。塹壕の外では、自動小銃の陰気な囁きに混じって、戦車の砲弾が朝の雨を含んだやわらかい土の地面に着弾する重苦しい、内臓でもぶちまけるような音が遠く轟く。 おや、あれは起床ラッパだ。士官学校の朝は早い。陽が東の窓から射して来るより前に起きて、シーツを丸めなければ、上級生の平手が飛んでくる。 私は目を開いた。夢だ。夢を見ていたのだ。戦場の夢、士官学校の夢を。懐かしかった。もう私はロートルだ、老兵は消えゆくのみとは誰かの言葉だが、自分がその立場になればそうも言ってはいられない。 苦労して頭を少し動かすと、古い友人のKの顔が見えた。ひどく怯えた、絶望した顔だ。笑おうとしてその目は意図を裏切り、涙を流している。してみると、私はよほど悪いのだろう。もう死ぬところかもしれない。 それなら言っておかねばならないことはある。私は口を開き、言葉を押し出そうとした。だがだめだ。喉が少しばかり鳴っただけで、言葉など出てはこなかった。ああ、ではしかたがない。私は目を閉じた。 もう目覚めないだろう。私はKのために言い残そうと思っていたことを、ひとつも言うことができないままに死ぬのだ。すまないと思う。だが、Kはきっと、失われた言葉よりも、私の死を悼み、そして許してくれるだろう。 私はゆっくりと眠りに沈んでいった。手足はゆっくりと冷えてゆき、そして心臓はやがて死ぬだろう。遠からず。そうだ、夕暮れを迎えるより前に。 というわけで。 パソ乃さん、ご臨終。 まいったなあ。データがみんな一緒にご臨終だよ…。 -
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