終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2005年12月19日(月)

 煙るような銀髪が顔の半分を隠していた。淫らに染まった顔の中で氷色の瞳は焼け付くような激しさでこちらを見ている。赤い唇が猥褻に舌を吐く。締め上げられる感覚に、この体に小さな死に似たおののきが走ってゆく。
 マルチェロははっと目を見開いた。今しがたまで見ていた夢のせいで体はこわばり、冷たい汗で濡れていた。それから―。
「……」
 マルチェロは小さく唇を噛んだ。明け方の不安な夢は下着に不快な痕跡を残している。およそ認めたくない種類の臭気に、マルチェロは苦々しく顔を背けた。だからといってそれが消えるわけでもなかったが。
 現実にあったにも関わらず悪夢以外のなにものでもなかった夜から一月が過ぎていた。その間に見た淫夢は何度になるのか。昼がいかに貞潔であろうとしても夜がそれを裏切る。また、憎み嫌う弟の行動のために自らの行動を変えることは彼の誇りが許さなかったから、あえて夜を避けることも選択の範疇にはなかった。またなぜククールが自らに挑んだのかを問い返すことは思いも及ばなかった。思いついたとしても、不快な思いとともに頭から振り払うだけだっただろう。弟に向ける感情と思考を排除することはすでに習い性だ。とはいえ、強いて続ける日常はすでに軋み始めている。
 清い身であろうとしていたのは、いかなる瑕疵も命取りとなりうる権力をめぐる争いの中で、できる限り弱みを持たないためだった。少なくともマルチェロ自身はそう信じている。彼の性欲は、幸い運動や勉学の中でまぎらしてしまえる程度のものであったから、少しの葛藤もなしにとは言えなかったにしろ、自らを律する力が緩むことはなかった。
(こんな形で喪うことになろうとは)
 マルチェロは不快さに苦い嘔吐感さえ喉の奥に感じながら、始末をつけるために身を起した。正面の壁には、古い三叉が飾られている。それはどうしてか、かつて感じていたほど輝かしくも近しくもないように思われた。



弁解しません。
童貞奪われてトラウマになって夢精してる兄はうまむーさんに捧げます。


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