- 2005年11月19日(土) ようやくオクターブの意味がわかった28歳と2カ月。 でもどうして整数倍の周波数だとおんなし音に聞こえるの? ピアノの「ミ」と「ファ」の間に半音の鍵がないのはなんで? そして相変わらず調性の意味と理屈がわからないぞ! …子供なんでも相談室に電話をするべきか。 ちょっと大人向けにつき、18歳未満は以下、閲覧禁止↓ ----------------------------- マルチェロは裸体にシーツを巻きつけただけの格好で、枕板によりかかって寝台の奥に座っている。日にあたることのない白い肩や鎖骨の上に黒い髪が散って、チェンバロの鍵盤ほどに鮮やかだ。その表情はどことなく頼りない。ククールは向かいあわせにかけて、そっと手を伸ばした。マルチェロは無言で動かない。肩口に触れる。指先だけでぎこちなく鎖骨をたどり、喉に触れて。マルチェロは身じろぎして、横を向いた。 「なあ。あんた――いま、怖い?」 マルチェロは答えない。後悔しているのだろうかとククールは考える。考えながら肩を撫でた。手の甲を髪が掃く。かすかな震えが伝わってくる。 「怖がるなよ。俺、あんたのこと大事だから。なあ、何か、言ってくれよ」 そっぽを向いたマルチェロの睫毛が音もなく瞬きし、かすかな苦笑がよぎってゆく。静かなためいきはククールに触れ、それからいささか無造作に、大きな手が頭を撫でた。 「なんだよ」 ククールはくすぐったくなって笑う。鍵盤の上ではあれほど闊達に動く手はまるでぎこちなく、ククールの頭を撫でている。マルチェロが笑った。今度は苦さよりも甘さの勝る微笑だ。ククールは身をのりだして顔に顔を寄せる。頬を合わせ、鼻先で鼻先をくすぐる。息は近く酌み交わされていよいよ甘い。頭を撫でていた手がするりと滑ってククールのむき出しの薄い胸の心臓の上に置かれた。 「……Allegro」 ククールは笑って、自分もまた手を滑らせてマルチェロの心臓の上に手を載せる。鼓動は暖かく、そして速い。初めてだといったこの肌のふれあいが、その鼓動を速くしているのだと考えるとなにともない陶酔に包まれる。 「Vivace」 マルチェロが屈託なく笑い、ククールが笑った。ついばむような接吻を交わす。幾度か、幾度も。甘い音はスタッカート、調子を変え角度を変えて。最後にはスラーが来る。互いに互いの唇を重ね合わせ、ククールは舌先を差し入れる。戸惑うような最初の瞬間の後にはまた微笑。くすぐりあう舌で、重ねた胸で、鼓動も体温も交じり合う。ククールはマルチェロの体に手を這わせた。形をなぞるよう、こすりつけるよう。重ねた唇の間からかすか、マルチェロの声が漏れるのに、脳髄は痺れる。 顔を離せば、マルチェロの目は濡れて、その頬は赤く、呼吸は速い。自分もそうだろうとククールは考える。こんなことには経験は関係ない。 「なあ…」 ククールは膝立ちになり、耳元に口付けを落として囁く。 「なんだ」 マルチェロの声は柔らかく、深く、今は濡れている。 「あんたのこと、好きだよ」 視線が向けられる。その瞼にも口付けした。泣きたいほどの思いはチェロでなら弾けるだろうか。答えよりも先に、背を撫でる手があった。 「あんたのこと、好きなんだよ。オルガンとチェンバロの次でもいいから、あんたは俺のこと、好きだろうか…。なあ、マルチェロ…」 抱き寄せられる。耳元には心臓の鼓動が歌う。Allegro con fuco、愛の歌。ククールは少し笑って抱き返した。耳元をキスがかすめる。独りの人間を音源として奏でうる限りの簡明さで。 音楽家兄シリーズ、IN寝台。 この調子でトレモロとかピッチカートとかでにゃんにゃんしてくれ。 弟だとバレる前の話。うまく弾けたご褒美とか? -
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