『宿命の交わる城』 4:12階の窓辺―幕間 - 2005年11月15日(火) 雨を降らせた雲はゆっくりと東に流れていって、天には光が戻った。夕暮れ間近な黄金の光は斜めに世界を照らし、濡れた城を照らし出した。暗い灰色の巨大な切り株のように円柱城は屹立し、長い影を落としている。 一羽の鳩が、羽音をたてて十二階の窓辺に舞い降りた。けっして野生のものではありえない、染み一つない灰色の小鳥は、不器用に跳ねて地上に向き直り、小首を傾げた。だが人であれば目を背けただろう。 城門と城砦を結ぶ真っ直ぐな道には、まだ馬と人との死骸が散らばって、よく見れば、灰色の異形の獣がいくつもそれらに取り付いている。死肉を食っているのだ。だが血臭は遥かに風に遮られて届かず、肉を食いちぎり骨をかじる音もまた膨大な空間に拡散し消失して届かない。ただただ食われ食っているものたちは、奇妙に清潔な光景であった。 とはいえ鳩は知らぬ。そうだ。鳩は知らぬ。つい先ほど、地下の穴倉でイーノが惨たらしく殺されたこと、その次にはシュテルンが殺されること、ジェズイーが獣のような断末魔を上げるだろうことを知らぬ。柱に縛り付けられたマルチェロが獣のごとく苦悶し、吼え、最後には哀願さえしながら殺戮の手を止めるよう請うことを知らぬ。その言葉が聴かれず、ついにその頬を涙が伝うことを知らぬ。またダニエルが狂気の哄笑を上げて年配の騎士の首を掴み、楽しげに壁に投げつけてみせることを知らぬ。砕けた骨の間から灰色の脳髄がこぼれだすことも知らぬ。鳩は首を傾げて羽をつくろい、クゥと低い鳴き声を上げる。窓のガラスにその姿は清しく映っている。 鳩は飛び立った。翼は軽く、そろえた脚は上品な小枝のようだ。鳩は光の中を行く。その脚に結ばれた印章が光った。それは丸い台の上に三叉が刻まれたマイエラ修道院の所有印であり、金色の真鍮でできている。常であれば文書を入れた小さな筒がとりつけられるべき鈎は虚ろなままであったが。 鳩はいささかも過つことのない本能が導くままに羽ばたいた。光はその姿を明るく照らし、真っ直ぐな道を影が過ぎった。そこに死んで横たわり、ぱっくりと口をあけた腹腔から今も一群の魔物に内臓を貪られ揺さぶられつつある馬のうちの一頭の傍らに、小さな金線の籠が落ちている。それは投げ出されたはずみに留め金が壊れ、鳩はそこから逃れたのであった。『我は人の思いのごとく疾く飛ぶなり』―優美な古書体で書かれた銘板が鈍く光り、鳩は彼方に飛び去った。 ----------------------------------------------- 45日ぶり? 実は忘れてはいませんでした。 ザ・グロテスク。死体情報満載。 死体好きです、血みどろ好きです。 次はチャンバラだ…。(次?) -
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