- 2005年11月14日(月) 魔術侯と元法皇の会話 「さあ、もう忘れろ。そんなことはありふれている。 殺すことも殺されることもあまりに陳腐だ、 終わったことを思い悩んで何になる? さあ、顔を上げろ。前を見ろ。思い悩むな。 おまえを見る目などない。おまえを許す憐れみなどない。 ぜんたい、この世に神などいたこともなかったのだ。 あるいはずっと昔はいたかもしれないが、きっと死んでしまった。 でなくてどうしてこれほど悲嘆と憎悪と苦悩が 世に蔓延していることがある? いいか、神は死んだのだ。善も悪ももうない。 さあ目を開け、神など幻、神など教えられた言葉にすぎぬ。 我らはただ荒野を行くのだ、思い煩うようなことはない」 「ではこの苦しみはなんだ? この手の穢れを患う心は? 神が生きておわすのでなければこの苦しみは何なのだ? ああ、答えろ、答えられなければおまえなど信じぬぞ。 私の手の血の染み、これはどのようにしても黙らぬ。 聞け、復讐を贖罪を、あったはずのことを奪われた悲しみを、 ああ、そうした一切を叫んで止まぬ。 これが幻だというなら、私もおまえも幻に過ぎまい」 「おまえの弱さだ。死人は語らぬ、死人は求めぬ。 神などいない。そんなものは世迷言だ。 さあ、聞け。神など信じるな、霊など信じるな。 我らは塵と生れ落ちて塵にかえる、それだけだ。 塵に罪を問うものなどおらぬ。それでいい。 さあ、俺とともに来い。世界を滅ぼそう。 滅ぼし、作りかえるのだ。 どこまでできるものか、どこまで行けるものか、 私とおまえで試してみようではないか」 「おまえは天の御国を滅ぼし、地獄をも滅ぼそうとするのか。 なんという傲慢だ、神を殺そうとは。 だがおまえの言葉は快く響く。 私の前に世界を開く。自由がそこにはある。 ああ、そこには自由がある。この罪の荷を降ろす余地がある。 だがこの荷は降ろせるものなのか? どこまでも私についてくるものではないのか? おまえが見せた世界こそが幻ではないのか? そこは魔界なのではないのか?」 「疑うな、俺と来い。 俺と来い。世界を滅ぼそう。世界を作りなおそう。 おまえの苦しむ罪を取り去ってやることができるぞ、そこでなら。 さあ、俺と来い。おまえがあれほど望んだ自由をやろう。 罪にかかずりあうな、それは後ろ向きの頭だ。 そうだ、後ろしかおまえに見せぬ。かかずりあうな。 前を見ろ、おまえにはその方がふさわしい。 誇り高いおまえには、志誇りやかなおまえには」 「いけない、私を誘惑するな。 おまえがいざなうのは魔界だ。俺はそれを知っている。 そうだ、おまえは私に神を離れろと言う。 だが私の心は神のもとにある。ひと時も離れはしない。 悪を行うときですら、神は私を見捨てはしなかった。 この苦しみこそが恩寵ではないのか、この苦悩こそが。 ああ、私は行かぬぞ。私は神にこそ従うのだ。 この苦悩こそが私を私にする、この手の穢れこそが。 ああ、私はおまえとは行かぬ。 私は善悪を離れはせぬ、罪を離れはせぬぞ」 「そして苦しみぬいておまえはどこへ行くのだ。 神はおまえを救いなどしないぞ。 罪は許されなどしないぞ。 おまえが行こうとしているのは苦しみの道だ、実りのない。 さあ、俺と来い。俺と来い、世界を富ませよう、人々を救おう。 善悪にこだわるというならそれもよい、最後は同じことだ」 「いいや、いいや、私はおまえとは行かぬぞ。 同じではないのだ。すべては神の名のもとにあらねばならぬ。 私は神のもとを離れて善をなすよりは、 神のもとにあって飢えかつえ、無為でいるぞ。 ああ、どれほどこの生涯が惨めに終わったとて、神を離れはせぬ」 「いや、おまえは来る。私と来るとも。 おまえは世界を良くしたいという願いを抱いている。 おまえは無為のままに死ぬにはあまりに強い。 さあ、嘆きをやめろ。歩き出せ。 神になど、罪になどかかずりあうな」 「よかろう、おまえは正しい。 私はおまえと行くだろう。だが忘れるな。 私は神を離れはしない。私は神とともに行くのだ。 おまえはいつか私に裏切られるかもしれぬ、心しておけ。 おまえの行いが神を離れれば、私はおまえに背く。 私は罪とともに行く、この苦しみとともに」 贖罪というのは後ろ向きだからなー…。 なんとか先に行けるといい。 魔術侯は誰かって?えーと…そのうち出てくるんじゃないかなー? -
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