『宿命の交わる城』 3:真っ直ぐな道で - 2005年09月26日(月) ひたひたと、冷たい水はゆっくりと満ちて渦を巻く。矢を受けて死んだ馬と騎士たちの体が浮かび、傷口から赤い血を煙のように吐きながら、遠くへ漂い去っていった。 「団長、あと半時間もすれば、私らはみんなお陀仏です」 シュテルンが耳元で囁くのを聞いたが、マルチェロは黙っていた。そんあことはわかりきっていたのだ。そうだ、それは明らかなことであった。城門と城郭とをつなぐ真っ直ぐな道に注がれる水はすでに生き残りの騎士たちの胸まで浸し、体温を奪いながら、なおも得体の知れない不定形な生き物のように殖え続けている。何度見回そうとも、両側に切り立った壁、背後の堅牢な門には逃れる手がかりもなく。 「団長」 「団長、このままでは」 「静まれ」 騎士たちは黙り、水音だけが残った。水の道に円柱形の城が映っている。うつむけばゆがみ崩れた己の顔が。マルチェロは顔を上げずに言った。 「ジェズイー」 年配の騎士ははっとしたようにマルチェロを見た。 「……頼む」 マルチェロは水面を見ていた。ゆがみ揺れ砕ける青ざめた己の顔を。その耳にジェズイーの声が響いた。 「聖堂騎士団長の名において、マイエラ修道院の衛士の名において求める。円柱城の御主の前に膝をついて求める!」 それほどの間もなかった。増し続ける水の上に小さく映った赤毛の男は、確かにそれを待ちかねていたのだ。マルチェロは唇を噛んだ。 「我らは武器を捨てる。捕虜として受け入れよ」 ジェズイーが叫んだ。頭上に響く笑いを、マルチェロは底ぐらい思いを腹に抱えて聞いた。 -
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