終わらざる日々...太郎飴

 

 

『宿命の交わる城』 2:城門の方へ―2 - 2005年09月07日(水)

 黒灰色の石よりなる強固な門はいかめしく、周囲に廻らせた高い壁と弓矢を放つ狭間、その彼方にそそり立つ円柱形の塔は古い悪意さながら。とはいえ南方の大陸から戦火が絶えてすでに久しい。
 激しい雨は騎士たちの一行の上に横殴りにたたきつけている。馬たちは白い息を吐きながら雨滴を散らして走り、フードを目深にかぶった騎士たちももう笑ってはいない。先頭を行くジェズイーが旗を高くかざす。
「門を開けたまえ、聖堂騎士団の主の名において求める。門を開けよ」
 呼ばう声は雨に消えたが、城門は音もなく開いた。その向こうには直線の道を隔てて円柱の城が見える。騎士たちは声もなく先に進んだ。
 高い城門を過ぎて、その影の下を通る思いに不安を抱いたのはおそらくマルチェロだけだ。だがそれが何に根ざすものかは知らぬまま。城郭に至る真っ直ぐな道の両側をなす高い壁のせいか、それともその石の黒光りする恐ろしげな様子のせいか。それとも見えぬ人影のせいか。だがこの雨では。
「整列、整列!」
 ジェズイーが叫んだ。先を急ぎたがる人馬が二列に並び、高い垂直の壁の間で威儀を整えている。マルチェロは息苦しさを覚えて顔を上向けた。
「――?」
 雨かと問うたのはわずかに一瞬。輝くものは狭間にあり、鋭い矢尻の形をしている。引き絞られた弓につがえられた、その矢の。
「ひ…引け! 引けー!」
 叫びつつマルチェロは手綱を引き、馬を返そうと振り返った。だが巨大な城門は重い響きとともにいまや閉じるところ。空気を切る矢の重い音が走って馬が高いいななきを上げた。騒然とする騎士たちの声。
「盾を、盾を頭上に構えよ」
「裏切りだ!」
「馬を捨てろ、馬を捨てて下がれ」
「マルチェロ団長をお守りしろ! 集まれ、集まれ!」
「殺される!」
「お怪我は、お怪我は!」
 あらゆる顔と風景と嵐が目前に転じ混じる混乱の中で、マルチェロは重い衝撃をいくつも盾に受け止めた。今や隊は馬を捨て、一塊となって、頭上に盾を構えつつ城門の方に後ずさる。逃げ惑う馬の蹄にかけられるもの、矢に射抜かれて事切れたもの、また傷つきながらも逃れようとするもの。跳ねる矢、矢、矢。
 ジェズイーが、シュテルンが、イーノが、マルチェロの脇を固めて、城門まで退却を果たした。だが固く閉じた扉は微動だにしない。
「なんてこった…」
 すぐ脇に立つイーノが呟くのをマルチェロは聞いた。ほかのものもみな同じ思いであっただろう。だが何か言ってやる暇はなかった。矢の雨が止んで、城壁の上に人影が立ったからだ。見事な赤毛の。


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アンデルセンとマクスウェルについての覚書2

 そのとき、マクスウェルは呆然としている。呆然としてアンデルセンのしようとしていることには気づかない。アンデルセンは深いいたわりと奇妙な情熱とともにマクスウェルを抱擁しまた愛撫し、行為を遂行しようとする。
 マクスウェルがようやく気づいたのはもう引き返せなくなった場所であり弱々しい抗いは愛情に満ちた制圧によって果たされない。しかしついに事の果たされ罪が二人を捕えたとき、マクスウェルは突如としてアンデルセンの長い祈りに思い至る。自らとともに神父アンデルセン、狂信者アンデルセン、神の獣アンデルセンもまた罪に落ちたと悟った瞬間に、真の愛情は彼を捉える。それは哀れみに近くしかも熱烈で狂おしい種類のものだ。
 激しい交歓を終えて浅い眠りに落ちたマクスウェルはしかし罪の意識に追いつかれる。アンデルセンは、半ば眠り半ば覚めながら狂乱し許しを請うことすらできない司祭マクスウェル、勤勉と清純によって神の愛を贖おうと求めたマクスウェル、パリサイ人の外面をしたキリスト者を抱きしめ、ともに罪の中にあるという奇妙でもあり真摯でもある愛情と哀れみに沈む。確かに彼はそうした罪を負って立つ力を持つ。

 …どんなヤオイだ!(白目) どっちかだけでも正気ならともかく二人とも狂信者だからなあ…。えらいものになりそうだから書かない。


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