- 2005年07月01日(金) 「私は私自身の陰鬱な影を、月夜の地上に釘づけにしてしまひたい。 影が、永久に私のあとを追つて来ないやうに。」 萩原朔太郎『月に吠える』序より 萩原朔太郎の長女、葉子氏が亡くなられた。 残念ながらわたしはこの閨秀作家をその作品さえ知らないが、 しかしむやみに悲しい気がする。弔意を示したい。 萩原朔太郎の「青猫」は母の蔵書だ。 古びて色あせた文庫本のページをめくったのは小学生の頃で、 そんなガキにとって、詩人の言葉は飴玉だった。 私は1ページをなかなか読み終わらなかった。 言葉の響きを舌の上で転がし、愛撫した。 いま読み返すと、なんとはなしに詰めが甘いような感覚は残る。 インテリの甘えめいたもの、インテリの無知めいたもの、 そんなものが端々から匂うような気はする。 つまり彼は俗物であったのだろう、俗物の欠点は一つだ。 普遍ではないということ。 だがその響きと想念のノスタルジー。 いまは「氷島」の方が好きである。 幻想のメッキが剥がれ、影に捕まった詩人の苦悶は本当だ。 「 家庭 古き家の中に坐りて 互に默しつつ語り合へり。 仇敵に非ず 債鬼に非ず 「見よ! われは汝の妻 死ぬるとも尚離れざるべし。」 眼は意地惡しく 復讐に燃え 憎憎しげに刺し貫ぬく。 古き家の中に坐りて 脱るべき術もあらじかし。」 萩原朔太郎『氷島』より -
|
|