終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2005年03月16日(水)

剣もて語れ

 細剣はバスタードソードとは違う。細い刀身は粗忽な手に扱われればすぐに折れるし、粗雑なやり方では子供にさえ致命傷を負わせられない。だがうまくすれば傷一つ負わずに戦闘を潜り抜けることだってできるのだ。
 間合いと距離と速さ。動きは直線を基本とし、相手の体ではなく針で突くように心臓だけを狙いとする。技が練れれば優美とさえ舞踏に似たとさえ呼ばれよう。だが真実はあくまで洗練された殺人法だ。
 ククールがどちらかといえば華麗に流れた所作をするのに対し、マルチェロのそれは殺人法としての性格をより明確にしている。だが強さは互角。
 速いテンポで試合は進んでいる。院長オディロはのんびりと髭を撫でながら、この日ばかりは試合場に装いを変えた修道院の中庭を見下ろしている。すでに試合は大方終わり、まだ残っている騎士は兄弟二人となった。出番を終えた騎士たちはそれぞれあざだのかすり傷だのの手当てをしながら回廊から野次を飛ばす。オディロの合図で旗が翻った。
 ねじを巻かれたように兄弟騎士は円を描きつつ柄を打ち合わせた。ククールの銀の髪、マルチェロの青い外衣が翻り、銀の針に似た刀身が揺れる。
 ククールはひどく楽しそうだとオディロは考える。最近、夜遅くまで剣の稽古をしていたのはただ兄が必ず上るであろう決勝戦の舞台に自身も上がるため。そこでは身分の差も血のつながりが作った罠も関わりない。
 高い音が立つ。どよめきが一層大きくなる。
 マルチェロもまたひどく楽しそうだとオディロは考える。相手が誰かなど関わりなく、思うさま剣をぶん回せるのが好きなのだ。自分では頭もいいつもりだろうが、そのあたりは子供のときから単純よな、と、オディロは若き騎士団長が聞いたら真っ青になって怒り出しそうなことを考えている。
 マルチェロがすばやく回転する。速さをのせた剣をククールが上から叩きつけて止めた。二人は今にも笑い出しそうだとオディロは考える。
 これからどうなるかなどオディロは問わない。なべて起きることは起きるであろう。神の望むことならば起きぬはずもない。だが信仰はこうも言う。すべて起きねばならぬことは起き、だがその後にはよくなるであろう。
 ククールが直線を残して兄の懐に飛び込んだ。そら、そんなふうに素直に言えばいいのだ。マルチェロはすんでのところで飛びのく。どちらも急いでこの試合を終えるつもりはないと悟ってオディロは笑った。この兄弟は心ゆくまで語りあおうとしておるわ。


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