終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2005年03月18日(金)

「あんたんとこの兄弟騎士はトンスラ剃ってそうだよねー」(知人X)
いやだよそんな兄弟、と答えつつ抹香臭いことは否定しない。
修道院で育って抹香臭くなかったらそっちのがおかしいって。
祈祷と神学と聖歌は教養というよりも血肉でしょうよ。

*トンスラ:頭頂部のみを剃り上げる基督教の僧侶の髪型。
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 マルチェロは頭を垂れ、微動だにしない。唇は音もなく祈りを刻み、その指はロザーリオの環の数珠を際限もなく数えていく。
 ククールは黙って兄を見ていた。どのような道にあるときも、兄の信仰は小揺るぎもしなかった。世界を滅ぼすほど激しい兄の霊が正気を保つには、おそらく存在するためだけにでも神の概念を失うことはできないのだろう。別の言い方をするなら、兄がこれほど強固な信仰を持っていなければ世界を危うく滅ぼしかけたほどの悪は為せなかっただろう。
 奇妙なことだとククールは考える。まったく奇妙なことではないか。悪がその背骨に神を持ち、神がその信仰を悪魔に許すとは。背徳が信仰を持つものによってなされるとは。ククールは手を伸ばして兄の肩に置いた。
「――兄貴」
 答えはない。もとより期待などしていなかった。
「帰ってこいよ。ここには神様も悪魔もいないけど。人間は崇高でも偉大でもないけど。でも、そこは寒いだろう」
 ククールは顔を伏せた。それから少し笑ってしゃがみ、兄に寄り添った。
「わかった、俺も祈るよ。あんたの魂の救済のために祈るよ。二人で祈ればその分だけきっと、早く帰って来れるさ」
 眠りもせず食べもせぬ兄の前に膝をつき、秀でた額に額を寄せた。乾いた肌はそれでも暖かく、ククールは耐えかねて両手を開き、兄を抱いた。知っているよりずっと痩せた体が腕の中に入ってしまったことが辛かった。


「神よ、心から祈ります」


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