- 2004年08月19日(木) ![]() 勝利はどのようにして視界に入ってくるのだろうか。 「彼」はこの試合の前、勝利をひどく遠いものと感じていたに違いない。 だから彼は牙をむいた。敗北せねばならない。いいだろう、敗北しよう。 だが無傷では立ち去らせるものか、完勝など許すものか。 そして彼は牙を剥いた。 ばね仕掛けのように彼は背後にのけぞり腕を振り上げ、 そうしてばね仕掛けのように腕を振り切った。 背中のエースナンバーを打者の目に刻み付けるよう。 打たれようと打たれまいと、彼にはかかわりなかった。 空を切り裂く白球は彼の牙だ。彼の爪だ。 勝利はどのようにして彼の視界に入ってきたのだろうか。 七回を終えてマウンドを降り九回裏、彼はベンチにいた。 驚くべきことに、スコアボードには大量リードが光っている。 これは夢か、と彼は呟いただろうか。その手は震えただろうか。 最後の打者がその打席を負えた瞬間に。 試合の間中、降っては止んだ激しい雨の後に広がった青空のように、 スコアボードの上に開いた青空とそこから降り注いだ真夏の日差しのように、 勝利は彼を包んだ。彼の視界を閉ざした。自らの歓声が耳を聾した。 勝利は百万の針でもって彼の全身を刺し貫き、それは歓喜に変わった。 -
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