終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2003年02月23日(日)

 十塚は長い濡れ縁を歩く。

 春の真昼だ。落ちたところから発光するような陽光が降ってくる。
 古びた床板を踏みまた歩き、十塚は一つの部屋の前までやってきた。
 ところどころ花形の紙で補修された障子の前に立ち、十塚は自分の影を見る。
 部屋の中では弟が死んでいるはずだった。
 この障子を開けずにすめばいいのにと十塚は切に願った。

 障子を開き――
 十塚は障子が光を薄め乱反射させる室内に、布団が敷かれてあるのを知った。
 足を踏み入れて、畳を踏んだ。後ろ手に障子を閉じた。布団の上には、
 布をかぶせた顔がある。その下からのぞいているのは。
 ――確かに弟の髪だろう。
 枕辺に線香が立てられてあるのが見えた。

 震えはしなかった。足取りも乱さなかった。
 枕辺に立って、それからゆっくり膝をついた。少しためらってから手を伸ばす。
 そっと取り去った布の下には、青ざめた弟の顔がある。
 目は閉じられ、長い睫毛は頬の上に落ちている。頬は青ざめ、滑らかだ。
 指先で頬に触れれば、ひどく冷たかった。

 理由もなく見渡した部屋はがらんとしていた。
 あまりにも広すぎるように思った。
 ふいに鋭い痛みをおぼえて、十塚は胸を押さえる。
 それを悲しみだと知った。もう手が震えていた。

 しばらくの間、部屋には嗚咽が響いた。











*十塚光彦:マイファーストキャラ(故人)


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