終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2002年10月03日(木)

黄金や宝石。

1:
学部時代の恩師、K教授のアルバムを見たことがある。
非常にダンディーな恩師であった。
きちんと髪を撫でつけ、パリッとした背広姿。
ネクタイはいつもシャレていて、風変わりなものを着こなしていた。

ともかく、そんなK教授のアルバムを見たのである。
五年前(当時)、だったかな?

えーと。
コレ、誰ですか?(しーん)


2:
髪、のびほーだい。
ヨレヨレのジャンパーの肩はフケだらけ。
シャツ、黄ばんでる。(きゃあ)

んー。

私が固まってると、後ろっから先輩K。
「再婚前の写真だよ」と、耳打ちした。
私は、K教授が奥方に先立たれたのだと思った。

それから二年ほど。

E教授が、
「K教授がねえ、退職金が思ったより少なかったってぼやいてたよ。
 家のローン払い終われると思ってたのにって」
と、口を滑らせた。
「え、でも、K先生のお年なら、家のローン払い終わってそうなもんですけど」
E教授、ニヤっと笑って声を低めた。
「前の奥さんと別れる時に慰謝料で家とられてるからね。
 ローンが残ってるのは二軒目の家だよ」

……ほーう。
K教授が浮気したのか愛人に走ったのか、
はたまた奥さんに愛想つかされ離婚が先だったのかは知らないが、
家庭崩壊の修羅場をくぐってきていたのか。
人は見かけによらんもんだ……。


3:
さて、卒業してから、K教授の退官記念パーチーに呼ばれた。

正式なパーチーであるから、当然K教授は奥方同伴だった。
小柄な、きちんとした感じの人だった。
(予想に反して美人ではなかったが)

ふーむ、服装の趣味もよい。

「教授の服がいつもダンディーなのは奥様のお見立てですか」
「いや、私はこれのマネキンでね」

とても、仲がよさそうだった。
とても、幸せそうだった。
空気が和やかだった。

パーチーの終わり、会場戸口で頭を下げて客を見送る奥方は、
「ありがとうございました」と言いながら、泣いてた。


4:
人間の業は、どこまでも尽きない。
人間の幸せも、どこまでも尽きない。
死ぬまでは、生きている。

あーうん。
とりあえず、まあ。

初志貫徹ちっくな子供のハッピーストーリーもいいけれど。
業のはなびらの中を、どこまでもどこまでも、
時に転び苦しみ愚痴こぼしながら生きていくのも、いい。

一つの物語の上に自分をのせることは楽だけれど、
それよりも絶えざる瞬間に切り苛まれるほうが、いい。
絶望も孤独も幸福も、愛さえそれほど長い寿命は持たないから。


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