- 2002年06月05日(水) 砂漠メモ第三段。 1: トレドを思い出す。 二月下旬、トレドの夜明けは霧だ。 タホ河からゆるやかに霧は立ち上り、 カスティーリャの平野を流れまた小高い丘であるトレドを押し包む。 アル・カサルの高い塔より光は滲み。 ここは、それとは何と異なっていることだろう。 何と渇いていることだろう。 立ち上るのは砂煙だ。 風は東南から吹き付け、砂を巻き上げ、また霧に似せて淡く空気の色を変え。 ――重く地表を這わせる。 2: 砂漠はゆるやかだ。 だがそれは無機質のゆるやかさ、 人間を遠く離れた悠久の動きだ。 ひとを殺しその上に静かに降り、 また積んでやまない優雅さだ。 美しく歩く女にも似て美しく、 それでいて遠く人間を離れている。 これが魔ではなかっただろうか。 暗闇にうずくまっていた駱駝は、 ある種異質な魔と見えた。 ジンはいったい、そのようにして感知されなかっただろうか。 そのようにして人の心に潜み、 そのようにして出現しなかっただろうか。 理由付けされない死は、そのようにして位置付けられなかっただろうか。 魔だ。 ――ジンニーア。 -
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