終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2002年05月30日(木)

「風のない海はほんとに静かです。
 夕方など、風邪がぴったり凪いでしまうと、
 海のおもては一面の平らになります。
 ……略……
 空をとんで行く鳥の姿さえ、
 何んだか水底深くわたってゆくようにさえ見えるのです。
 天空の高さとおなじほどに海の深さを思わせる映ろいがそこに見られます」
           宮本常一「家郷のおしえ 私のふるさと」より



どこにあからさまな感情の高揚があるだろう。
そこにあるのは、もはや外側からの視線ではない。
溶け合い血の通う風景の中にある人間の姿だ。

子供としてまた少年として、
青年として成年の男として、
やがて老いをも。

あなたはそこにあった。
そして凪いだ海はあなたを映し、
あなたはそこに幾度となく鳥の像を見た。
青く翳る水底に。

あなたの中には常にその風景があり、
あなたはどこにいても、ほんとうはその風景の中にある。
そこはあなたの郷里。そこはあなたのありか。

あなたは失われない。
あなたが失われたと誰かの言ったとき、
あなたはただその風景の中に還っていっただけだ。
過去と未来とを収斂し。
それは呼ばれるでしょう――永遠。



ねえ、きみ。
きみは私にとり、家郷の価(ホーム・ヴァレンツ)を持つ。
それはきみが、私にとり――だと、いうことなのです。


-



 

 

 

 

ndex
past  next

Mail
エンピツ