終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2001年12月03日(月)

スタヴローギン考

1:
彼は、どれほど生きても、
自分が生きているフリをしているようにしか思えない。
彼は「生」の感覚を理解しえない。
彼は目を輝かせる誰かを訝しむ。

彼は腐った内臓を持っているのではないかとさえ己に対して疑ったろう。

なぜ、なぜ自分一人。
これほどまで阻害されているのかと問うただろう。
他者の漏らしたあこがれの嘆息に、どうして俺だけが味わえないのかと、
そう声なく叫んで――壁を殴っただろう。

胸苦しい!――その感覚を、私は理解する。


2:
何もかもすべてが同じなのだ。
彼には。

だからすべてが無意味なのだ、平等に。
彼には。

彼はいろいろ、試してみた。
悪を試し、善を試した。
どちらも無意味だった!
どちらも灰色だった!

生きるという感覚を、彼は理解しない!
焦がれても――苦しんでも――泣き叫んでも!
彼には、ひとつのものが欠けている。

――そしてそれがすべてだ!

この灰色の壁は、彼と生を隔てて、行かせない。


3:
人間は。

生物なら、ごく簡単な生物なら、簡単なのだ。
そのすべての可能性、そのすべてのありよう――は。
生まれ、育ち、番い、子を産み、死ぬ――生活環だけで事足りる。

人間は。

顕現しえない。
そうだ、人間の持つのすべて可能性、すべて善と悪。
けっして、この世界には顕現しえない。十全には。

語られずに終わった言葉が、そう、私に教える。
言葉になりえぬ思いが、そう、私に教える。
まだ予感にしかならない、ある巨大な想念が、私に教える。

人間は。

氷山の一角だ。
見えるよりも、遥かに大きな何物なのだ。
まるで、壁から抜け出ようとする神々のレリーフのようだ。
その後ろ半分こそが偉大なのに、それはけっして、
この三次元世界には存在しえない。
一人の完全な人間さえ、この世界は容れえない。

私はもがく。
スタヴローギンももがく。

自分自身を、この不完全な世界に――
産み落とそうとして。
だがそれは不可能だ。
できるのは、ただ。

――もがきつづけることだけ。


「私を生きさせて!」


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