- 2001年11月19日(月) 会話の諸段階2 1:相手。 一番簡単に好意を買える話術は、何も言わないこと。 つまり、聞くのに徹することである。 もっとも、相槌の打ち方は難しいし、 話を引き出すことに至っては、タイミングと笑いと冗談口、 そして疑問符と反語、呼び水としての反対など、 微細な技術の使用に習熟する必要がある。 だが、やはり、聞くことは、相手の好意を買う第一の手段である。 人間はすべからく、話したがる生き物だ。 2:聴衆。 話し相手ではなく、周囲にある種の印象を与えようとする会話がある。 見せる、聞かせる、会話である。 ショーとしての会話、聴衆のいる口喧嘩はこれに属する。 誠実と論理は重要とされない。 曲解もはぐらかしも、ここでは正当である。 見せ、また勝つためには、相手の論理をねじまげることは常套、 論旨をすりかえ、誘導を用い、のってくれば嘲り、のらなければ兆発し、 反論をジョークにまぎらわして発展を妨げる。 重要なのは主導権を握ることだ。 相手を翻弄し、自分の用意した結論に落とし込むのがこの会話の勝利。 言葉など、どうとでもなる。 誠実を眠らせてしまえば、どこからでも、どこへでも、行きつける。 3:議題。 対話がある。 相手よりも、話の内容に主眼をおくそれである。 感情はあってはならない。 相手がいないように振舞うことだ。 論理だけを積み重ね、裏付けと問いと検証で積み立てる。 それはむしろ、建築に似ている。 論理に対する誠実と、熱意を。 言葉はわかりやすさよりも正確を。 自分がいないように振舞うことだ。 4: あなたはわたしをさみしくさせる。 それとも、さみしくさせているのはわたしなのだろうか? このさみしさは、わたしのものなのだろうか、それともあなたの? わたしはグラスをのぞきこみ、あなたはこっそり嘆息する。 そしてわたしたちは途方に暮れるのだ、このさみしさ、居座った招かれざる客に。 ほんとうに言葉と心を交し合うことの、なんと困難なことだろう。 わたしたちは双子のようによく似ている。 わたしたちは、その日暮の会話しかしらない。 必要なのは、出口です。 ――『ほんとうの手』を、ください。 -
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