- 2001年10月31日(水) 1: 学園祭が近い。 もう、明日からだ。 門から校舎へ向かう道には、手作りのベニヤの看板。 餃子やら、しるこやら、わたあめ、ヤキソバ、たこ焼き。 コンサート、演劇部の恒例の舞台。 ストリートダンス部は場所を構わず練習して困る。 7時を過ぎれば誰もいなくなるはずの校舎に人声。 騒がしい、トンカチ、カナヅチ、 忙しい人の気配。笑い。 荷物を運ぶ掛け声。 夜の中に響く。 祭の――気配。 高揚する空気。 澄んだ夜の中にエーテルが流れて行く。 私の足も、自然に軽い。 見えない何かは踊るよう。 2: そういえば。 だんじりは私の郷里の祭。 町の誇りの彫り鮮やかな地車を、辻々に引きまわす。 死人の毎年出るのはあたりまえ、勇壮ならば危険はつきもの。 法被、腹掛け、地下足袋、ねじり鉢巻きつく締め、 少女たちは長い髪を編み込みにして凛と美しく、 青年団は日に焼け声を嗄らし、屈強な体は涼しく強い。 笛と太鼓を受け持つ少年たちは、地車の彫りの間から四方を睥睨する。 大工方は団扇を翼に自由自在、地車の屋根の上を飛び、 その号令一下、長い曳き手たちの列が走り出す様は胸のすくよう。 祭は宵宮と本宮の二日に渡る。 二日目の昼間、地車は宮へと渡り、 夜更けにそれぞれの町へと帰って祭は果てる。 そうしてまた、私達は次の祭へと日付を数え始めるのだ。 がしかし。 三日夜の太鼓、という言い草がある。 三日目の夜、どこからともなく、太鼓の音が聞こえてくることがある。 驚いて祖母に尋ねた。 まだお祭り、終わってないの、と。 ああ、あれは、と、祖母は答えた。祭りの法被を畳みながら。 ああ、あれは三日夜の太鼓、祭りの行くのを惜しんで―― ――もう少し、と、未練がましい若い衆が太鼓を叩く。 呼んでも帰らぬ祭りを呼び返そうと。 三日夜の太鼓が夜半に響く。 3: その坩堝、この高揚。 前夜にさざめき、三日夜に名残を惜しむ。 そのような瞬間を持つものこそ、幸いだ。 たとえ追憶が苦しかろうと、待つことがじれったかろうと。 それは―― 生きることを惜しまないでください。 失って哀しむことも、手に入らなくて嘆くことも、 じたばたすることも。 どちらも生きることです。 おそらくは、幸福と同じほど。 -
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