終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2001年10月10日(水)

家族が希薄になってゆく。

1:
共有する時間が減少し、
距離が遠のき、
知らない部分が増えて行く。


「いつ髪を切ったの?」
「この賞状、どうしたの?」
「――ああ、みんなで行ったの?」


家族が遠のく。
空気が薄まる。
交わされる言葉の中に知らないことが増えて行く。

私は――――――――――


2:
これは自然なのだろう。
これは、当然の過程なのだろう。
わかっていたはずだ――家を出たときから。

私は私の軌道を行くのだ。
私の軌道は、あなたがたの家を離れたのだ――


遠ざかる。遠ざかる。


弟の背丈は私を越した。
母は私の知らぬ理由で忙しい。
父は――また、出張が増えているようだ。

見知らぬ人になってゆく。端から。
家を見捨てた私を、家も見捨てる。
ああ、遠ざかる――。


3:
泣いてはいない。
悲しんでもいない。

ただ、ほんの少し、頭を傾げ――思うばかりだ。


「なにかになるか、なにかをするか」


私に問うたのは誰だ。何だ。
それが誰であれ何であれ。
別離があるなどということを、おまえは告げなかった!

私は憧れのうちに選んだだけだ。
別離など、その夢想の中にはなかった。

(だが、選ぶとはそういうこと。結果は裳裾のようについてくる――)


4:
私は晴れた日の野原に立つ。
空はどこまでも青い椀。
風は夏。
手を伸ばしても――何にも触れない。

私は、私の歩みを支えてきた幾つかの手から離れ行く。

ああ――この足は十分に強いだろうか。
この心は十分に強いだろうか――。
この目は、見る準備を終えただろうか。


  「一人立てるだろうか?」
  「やりたいことを、できるだろうか?」


立てなくても、立つのだ。
できないなら、やるのだ。できるまで。


5:
親密な空間を失う。
親しかった家族が遠のく。

わたしは、なんと多くの糧を、そこに得たことだろう。
わたしは、そこで、なんと――自由に、この枝を伸ばしたのだろう。
わたしは――。

手を伸ばしても、あの世界は遠い。
感謝する。深く感謝する。


わたしの全ての歩みをもって、感謝の言葉に代えよう。


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