終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2001年10月09日(火)

あ。

1:
昨日の日記を読んでから、そのへんに転がってた本を読み出して――
なんか、引っかかってた。

「……?」

例によって、私はしつこい。
しつこく、考える。
私の演算機能は、止まらない。

「……あ」

ニーチェじゃないか。
『ツァラトゥストラ』だよ。
ニーチェの善意と悪意に関する記述、
ほぼそのまんまじゃないか……。(ためいき)

気づいたのがさっき。(笑)


2:

今年は、6つ年下の従姉妹が、大学受験の年だ。
志望動機はどんなふうに書けばいいのかと、
心配そうに電話で私に聞いてきた。

「さあ……」

頼りにならないおねーさんである。
従兄妹はスゴスゴ電話を切った。


大学受験は、私が、唯一、
「私、気が狂うかな?」と思ったイベントだった。
ちょっと無理めのところを狙っていたので(落ちたが)
一日、ほぼ起きてる間中、参考書とにらめっこしていた。

ふと、ある日。
図書館の自習室に滑り込み。
数学の参考書を広げた。

……なんじゃこりゃ。

文字が文字に見えなかった。
紙の上には異様な線形がのたくっていて、
それは文字のはずなのだけれど、文字には見えなかった。


仕方ないので、席を立った。
席を立って、2階の閲覧室をブラブラしてた。

それは冬の日で、夕日が沈んでゆくの、見てた。
黄昏が色をなくしてゆくの、見てた。
夜が幅広に落ちて、広がるの、見てた。

疲れてた。
と、初めて、気づいた。
ああ、私、疲れてた。

不安に追われて、時間に追われて――私、疲れてた。渇いてた。


そこらの本を手に取った。
何でもよかった。本が読みたかった。
輝くような言葉と会いたかった。

偶然だったのか、運命だったのか。
手に取ったのが、世界文学史上、最も
「キョーレツ」(モーレツ?)な本だったのは。(くらり)


『ツァラトゥストラかく語りき』


やられたよ……(ふ)


3:
18やそこらで、その思想を理解できたとは言わない。
ましてや一切の背景を知らずに読み始めたのだから。
でも、その言葉は。

澄んだ黄金だった。
鳴り渡る青銅の鐘だった。

私の中に流れ込み、私の渇きに染み入った。
私のほんとうの食べ物となった。
そして失せることがない。


良かれ――悪しかれ。


わかるだろうか?
飲み下すようにして一つの思想に触れることは、危険だ。
ほんとうの食べ物とは、いつでも極度に危険な毒物でもある。

(もっとも、危険でさえないような思想にどんな意味もないが)

それは私の体内にひとつに構造を構成した。
私が理解したとさえ言いがたいその思想の構造に沿って。

私を決定した。


4:
影響を受ける、と、言う。
なんと生ッチョロイ言い方だろう。

己の精神の一部の構造が組み替えられるのだ。
その形の溝が刻まれるのだ。
開示された風景に目を奪われて――その道へと招かれるのだ。

私の見たのは、なんという風景だったことだろう。

最も明るく最も暗い。
最も多くの否と高い是のある。
その視界は――鳥のそれだ。
猛禽のそれだ。

私は魅了された。
未決定だった構造の一部がその形に姿を変えた。


その変化は不可塑だ。


あのとき、手に取る本をもっと慎重に選んでいたら、と。
そう思わなくもない。


5:
で、ナニが言いたかったのかというと。


……受験がんばれ、従姉妹よ。
でもって自己アピール五行分を一文で書くのはあんまりだ。
デスマスくらい統一しろ。
「うちの学校」なんて書くな。
ねーちゃんは応援してるぜ。


――以上。(笑)


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