終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2001年09月15日(土)

爪ばかり伸びてゆく。
牙ばかり尖ってゆく。
私の翼を見てはいけない。


1:成熟
犬は五歳の子供の知能しか持たないと言う。
裏返して言うなら、犬は、五歳の子供として成熟してゆくのだ。

五歳は成熟して六歳にはならない。五歳には五歳の成熟がある。
騙されてはいけない。それは生長ではない。

それは狡猾で、しかも閉塞している。
子供の顔と背丈のまま年老いた顔を見るがいい。

その汚い、気味悪い、人間とはもはや見えない猿のような顔を見るがいい。


2:生長
昨日の己の死を目覚めて知ること。
今日は異なる生物として己を見出すこと。
明日には見知らぬものとなること。

日ごと粘液からのたくり出し、手指から血を流し、世界を1から数えなおす。
昨日の算法はもはや役に立たず、明日には今日の算法も役に立たぬと知りながら。

昨日の骸を取り片付けながら、その異類の足の数を数えて反吐を吐き、
明日の異形の卵がぶつぶつと背中に植え付けられているのを見て反吐を吐く。

異臭を放つ、黄色い反吐の道だ、それの通った跡は。


3:青い門
見るがいい。その開いた門の先は掃き清められて清潔だ。
硝子のように透き通った空気はどこまでも澄んでその先は青く明るく消えている。

見るがいい、そのおとのない静けさを。
なんという懐かしさをおまえに与えるのだろうね、そこは。

おまえの心臓は握りつぶされたようだ。
涙は、満ちて、満ちて、地面につくほどまでにうな垂れた
おまえの顔から滴り落ちる。

おまえは、その青を見つめている間だけ、自由だ。
おまえは、その青のことを考えている間だけ、人間の形に戻れる。

――にも関わらず、おまえは行ってはならない!


4:慟哭
青い門は既に遠く去った。呼び戻す術はない。
今やおまえは、内臓を引き抜きたいほどの悔恨に襲われている。

泣き叫べ、哀れなおまえよ。
汚れた猿よ、多足類の怪物よ、できそこないの魔物、うす汚い蛆虫よ――おまえよ。

泣き叫べ。


……――私よ。


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