- 2001年09月05日(水) 1: 市議会議員の選挙が近い。 宣伝カーは朝な夕な いつもは静かなばかりの私の部屋まで騒がせる。 蝉の声はもう聞こえない。 夜は私は長袖の寝巻きを着る。 傾く日差しに百日紅は色褪せた。 夏が終わる。 「 ああ 夏よ去れ 心明かすな 棲みつかぬ 季節よ失せ行け 切れ切れに 惑ふ我かな 」 小林秀雄『夏よ去れ』より 2: 私は14の年まで熱帯で育った。 夏の国が私の故郷だ。私の多くの記憶はそこに属する。 今、秋を通り路として冬への旅へと急かされる。 私の郷里は―― 光る枝葉を撓わせる椰子の木に私は郷愁を持つ。 午後の陽光が黄金色の蜂蜜のよう広がり、時は足を止めたよう―― 私はまどろむ。まだ、すっかり眠っては、いない。 読みかけの本がはらはらと指に添ってこぼれてく。 瞬く私の視線は、低い。 毛足の短い絨毯の上、斜めの陽光は延びて、白い壁に四角くかかる。 私は瞬き、目を閉じる。 裏庭の椰子の葉の、そよぐ。硬い葉の擦れ合う。 半ば眠りながら、とりとめもなく私は思う。 明日の宿題、十日遅れでつく少女雑誌のおまけ。 切れ切れに、うとうとと、私は夢見る。 ぼんやりした影や、誰かの面影や、日本に帰ってしまった友達のこと。 私の髪に音のない風触れてくる。そうっと、撫でるように。 眠りさそうのは、どこか、とおい、ものおと――…… 「 僕は睡らうか…… 電線は空を走る その電線からのように遠く蝉は鳴いている 葉は乾いている 風が吹くと揺れている 葉は葉で揺れ、枝としても揺れている 僕は睡らうか…… 」 小林秀雄『中原の死』より孫引き 3: 夏、は、いいです。 夏、は、好きです。 渇いた埃の匂いと、重量さえ持つかのような、鋭い真昼の日差し。 誰もいない、見知らぬ町の街路を、歩きたくなります。 その峻烈な明るさと、沈黙と、孤独に、切り裂かれることを思います。 夏の終り、日差しが透明になり、もう町は遠くまで陽炎に揺れることもなく。 夜の空気がひんやりと肌に添うようになります。 あれほど鬱蒼と、あれほど色濃く茂っていた桜の緑葉が、 ――黄ばみ、乾き、落ち始めます。 私は、知らず知らず、家路を思うのです。 帰りたいと思うのです。 夜行列車の夜明けになつかしい町にたどりつき、 なつかしい部屋の扉を開けても。 そこはやはり、私の故郷ではないのです。 次の夏までの、長い旅路に、私は自分がいることに、気付くのです。 ………………………… …………九月に入ったら、パソ前で寝込むもんじゃねぇや。 ハナが止まらん……。 -
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