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■ ドビュッシー、そしてリスト。
もう、フジコ・ヘミング以外何もいらないと思えるような夜である。
大きなこと、哀しいことがあったわけではないけれど、それは継続的に積み重なっている小さなことや重たいことが、一定以上の嵩になってしまう夜なのだと思う。 ピアノの音色しか受け入れられない。 そして、フジコ以外のピアニストは受け入れられない。
何にも邪魔されたくなくて、このひとりの空気に不純物を入れたくなくって、インターネットも見ないし誰かへのメールも書きたくない。 誰にも入れない場所。
夜だったけれど、極力小さな音でドビュッシーをピアノで弾く。 『レントよりも遅く』はまだ弾けないけれども。
ピアノを弾けてよかったなと思うのはいつもこういう夜だ。 だれとも分かち合えることのできない、自分ひとりだけの夜。積み重なった気持ちを、わたしはピアノの音色と混ぜる。旋律と音のことしか考えない。頭の中はそこに狂ったように陶酔している、わたしだけの時間。 ピアノを弾けなければ、わたしはこういう夜をいったいどうして過ごせただろう。
考えまい。
ひとりで泣いていたとしても、ものごとはひとつずつ少しずつ、進んでいくのである。それが辛かろうと哀しかろうと。
レントよりも、遅く。
2006年11月15日(水)
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