ケイケイの映画日記
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2023年03月06日(月) 「最後まで行く」




最近ね、観たい映画がどんどん狭まる。これも長年映画を観続けている弊害か?ヒーロー物、中身は薄そうな鳴り物入りの大作(当社予測)、感動がウリの作品(気が付けば感動していた、は可)、三時間前後の長い作品、そして小難しそうなアート系等々を除外すると、本当に少ないです。昨日はとにかく面白い作品が観たい!と言う事で、日本版リメイクが公開間近で、リバイバルのこの作品に。めっちゃ面白い!すごい面白い!最高に面白い!気分はアゲアゲ、この作品をチョイスした自分を褒めたいです(笑)。監督はキム・ソンフン。

殺人課の刑事ゴンス(イ・ソンギュン)。今日は母親の葬儀なのに、署内の内部調査が突然始まります。チームでの横領がバレるのを恐れて、葬儀から理由をつけて抜け出します。車を走らせている途中、通行人を跳ねてしまい、あろうことか、被害者は即死。密かに車のトランクに乗せ、遺体は何と母の棺の中に押し込め、偽装工作するゴンス。しかし、翌日出勤してみれば、被害者は殺人犯として指名手配されており、ゴンスのチームが捜査を担当する事に。心臓がバクバクする中、次は「お前は人を跳ねた人殺しだ」と、ゴンスに非通知の電話が入ります。

とにかくノンストップの展開です。途中途中で一息付けるよう、間合いの絶妙な吉本新喜劇的なギャグが入り、笑わせてくれるので、瞬きくらいは充分出来ます(笑)。

交通事故から遺体を母の棺に納めるまでを、一息に見せます。防犯カメラから隠す様子、秘密に遺体を運ぶ様子など、刑事って凄いなぁと、別の意味で感心(笑)。母親の葬儀中に何とバチ当たりな!と怒る隙も与えない程、背徳感も皆無。しかしクールでも全くない。「オンマ、ごめんな。すぐこの遺体は出すから」や、遺体に包まれたスマホの着信音が鳴るや、「オンマ、助けて!」とゴンスが棺に泣きつく様子など、この悪徳警官に情すら湧いてきて、上手い演出だなと思いました。

電話の主は警官のパク(チョ・ジヌン)。パクには裏の顔があり、押収したシャブ横流し、風俗店経営で大儲け、暴力団とも癒着があり、小物悪党のゴンスより、ずっと大悪党でした。

パク演じるチョ・ジヌンなんですが、これがもう、出て来た瞬間すごい存在感。体格が良い長身に似つかわしくないキューピー顔が、不気味そのもの。私は一瞬「マニアック・コップ」を思い出した程。容姿だけで不気味(笑)。モンスター感が半端ではないです。通常のジヌンにモンスター感はなく、この作品ではメイクも濃く意図的なんでしょう。数々演技賞に輝いたそうで、納得でした。

交通事故が他の刑事にバレそうになるゴンスと一緒に、こちらもドキドキ。極悪キューピーは、本当に人でなしで、様々な方法でゴンスを追い詰める。この方法も、鬼畜の連続です。その事で小悪党のゴンスは、真相に近づき、負けてなるもんかと反逆するんですから、人間はやはり善と悪では、善が勝る生き物なのかも?

ストーリーの中に絡める警察への皮肉が満タンです。ゴンスの妹が、亡き母が貸している家で飲食店を開きたいと言う。今住んでいる人が居るじゃないかとゴンスが答えると、「兄さんは警察官だから、出来るでしょう?と言う妹。「警察はギャングじゃないぞ」とゴンスは返答します。パクやこの作品での警察内部はデフォルメしているでしょうが、国民感情としては、不信感が大きいのかも?そこはジャンジャン挿入されています。

他にもゴンスが離婚して娘を引き取っている、夫の失業で実家に戻り、ゴンスに養われている妹夫婦など、特に必要ない設定も、伝統的な韓国の家庭像が崩れているのが、返って世相的にリアルなのかも?と感じました。

この二つが、ノンストップの展開に彩りも添えています。最後の最後まで尻尾まであんこ状態で、「最後まで行く」のタイトルが、本当に意味深に感じました。くれぐれも、草葉の陰でオンマを泣かす事のないように。現在アマプラで絶賛公開中ですので、是非ご覧あれ!



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