ケイケイの映画日記
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2022年07月18日(月) 「X エックス」


世間様からずれて、日曜日から三連休のワタクシ、何を観ようかと迷っているところ、親愛なる映画友達の方から、「どんなもんか偵察よろしく」とのメッセ到来。リストには上げていたので、追い風となり鑑賞となりました。なかなかホラーとして格調高い出来です。見逃さずに済み、お友達に感謝。監督はタイ・ウェスト。

1979年のアメリカ、テキサス。プロデューサーのウェイン(マーティン・ヘンダーソン)とその恋人で女優のマキシーン(ミア・ゴス)、同じく女優のボビー・リン(ブリタニー・スノウ)と恋人の男優ジャクソン(スコット・メスカディ)、監督のRJ(オーウェン・キャンベル)と恋人で録音係のロレイン(ジェナ・オルテガ)の三組六人は、ゲリラ的にポルノムービーを撮りに、気難しい老人ハワード(スティーブン・ユール)が所有する、片田舎の家を借ります。ポルノを撮る事はハワードには内緒ですが、ハワードは「家内のパールを刺激しないでくれ」とだけ、忠告します。

祝日とは言え、朝8時半の回にホラー観るなんて、多分5人くらいで鑑賞かと思いきや、30人前後の観客が。まぁこんなにたくさん好事家がいるなんてと、内容とは反する、心温まる鑑賞前でした(笑)。

先達の秀作群(特に「悪魔のいけにえ」)に敬意を払い、ド田舎の古びた家、不気味な老人、半裸の綺麗なお姉ちゃんたちのセクシーな様子と阿鼻叫喚が満載。そして殺人鬼です。

内容なんてまるでなかった「悪魔のいけにえ」に比べて、今作は登場人物みんながキャラ立ちしています。特に女性陣。二人は元はストリッパー。ボビー・リンはビッチでおバカな金髪と思いきや、野心家でなかなか賢い切り返しをする。マキシーンも底辺のヘロイン中毒の、はすっぱ感を醸し出しながら、憂いのある表情に、何か秘密もありそう。可憐な少女にも見えるのです。この「仕事」にも迷いが見え、ボビー・リンほど振り切れていません。理屈っぽく初心なロレインの変貌も面白い。

そしてパール。80超えだと思えるお婆さんですが、何とニンフォマニア。マキシーンを気に入り、付きまといます。もちろん夫にも他の若い男にも迫る。醜悪ではありますが、若さへの嫉妬と羨望、性への枯渇せぬ欲求に、あまり嫌悪感を感じなかったので、考えてみました。

夫は二度戦争に行って、帰還している。妻の欲望に対しても、年齢から応えられない自分を、夫も不甲斐なく思っています。若い男に裸体にを見せ、夫には「私を愛している?」「私は綺麗?」と、あんた口裂け女か?の問いを繰り返すパールは、夫との愛情交換、及びそれに付随するセックスが、若い頃〜壮年期、少なかったんじゃないかと思いました。戦争で夫不在が長かったのか?だから「戦争に二度行った」と言うセリフが出て来たのかと思いました。

ハワードは作中ずっと妻を気遣い、良い夫なのよね。もしかして、罪滅ぼしか?なんだかんだ言って夫婦仲は円満そうだし、余計に上記を感じました。

自分たちに不快感を露わにするハワードに、「出来ないから(セックス)羨ましいんだ」「そうそう、だから出来る時にたくさんやらなくちゃ!」と言うセリフも思い出す。この映画ね、鰐とか、ずっとテレビで流されるキリスト教の伝道師の様子とかね、意味ありげなプロットをいっぱいあちこちに散りばめてあって、それを上手に拾ってくれます。

ゴア描写の方は、冒頭のグログロ場面が最初の殺戮に繰り返され、釘や刃物での「痛い」描写が上手かったです。暗闇に血が飛び散る場面では、赤い閃光に見えて、なかなかアートっぽく「サスペリア」調でした。とある場面では、人が死ぬのに笑える場面があり、そこも「悪魔のいけにえ」を彷彿させました(←改めて観ると、結構笑えるんだよ)。

俳優さんたちは、男女とも脱ぎっぷりも良いし、惨劇場面も阿鼻叫喚で大量出血ですが、グロもエロもほどほどの描写でやり過ぎ感がなく、そこも品よくまとめてあります。パールのキャラの方が印象深いと思っていたら、前日譜と続編と、あと二つ作るんだって。そこを意識しての作りだったのでしょう。実はバールもミア・ゴスが演じていてね、パールとマキシーンの関係性も浮き彫りになるのでしょうか?

眉毛の薄いのがチャームポイントのミア・ゴスですが、あんなにソバカスあったっけ?と思っていましたが、それも伏線みたい。他にも次作を観たら、あー、あれはこうだったんだ!と思い出すことでしょう。クレバーで哀愁を感じるホラーです。




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