ケイケイの映画日記
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2022年03月01日(火) 「ウェストサイド・ストーリー」




凄く良かった!素晴らしい!いつも書いていますが、私は長い映画が嫌いで、ミュージカルにも低体温(ついでにSFも)。それでもスピルバーグが、この普及の名作をリメイクするなら、観るしかありません。復習なしで臨みましたが、新たに作ったリタ・モレノの役柄以外、ほぼ元作に忠実だったと思います。今こそリメイクする作品だと強く思いました。監督はスティーブン・スピルバーグ。

1950年代後半のニューヨークの下町。ポーランド系移民のジェッツと、プエルトリコ系移民のシャークスが対立しています。しかし、ジェッツのリーダーだったトニー(アンセル・エルゴード)と、シャークスのリーダー、ベルナルド(デヴィッド・アルバレス)の妹マリア(レイチェル・レグラー)が恋に落ちます。

元作を初めて観たのは、実はテレビのノーカット版です。マリアの吹替は大竹しのぶだったと思う。今でこそ花も嵐も踏み越えて、女の人生百戦錬磨の大竹しのぶですが、当時は清純で愛らしく、若手演技派のトップでしたから、マリアのイメージに重なって、私は違和感なかったです。その後、一度劇場で観ました。元作の字幕では、「ジェット団」「シャーク団」でした。


冒頭、立ち退きの土地が現れ、お馴染みの曲に乗せ、少年たちが指を鳴らして少しずつ集まるプロローグを観た瞬間、何故スピルバーグがこの作品をリメイクしたのか、とても腑に落ちました。世界中の国に各国の移民が渡り、その土地に根付いて子を生している現在、この作品で起こっている軋轢は、あちこちの国の「今」なのです。


刑事が現在のジェッツのリーダー、リフ(マイク・フェイスと)に言います。「イタリア系が懸命に働いて金持ちになっている中、お前たちの親父や爺さんは、アル中薬注、売人に強盗。母親は売春婦だ。
ろくでなしの親の元に生まれたのがお前たち」と、若者たちの自尊心を踏みにじる。底辺で家庭の愛に恵まれない若者たちは、昔で言う愚連隊となっている。同じく底辺でも、まだアメリカに来て日も浅いプエルトリコ系は、自分たちを脅かす脅威だったろうし、親族や同胞の絆の強さに、嫉妬や憧れもあったでしょう。そしてアメリカ人と同じ白人であるのに、貧しい。

これは、ニューカマーの移民に、自分たちの仕事を奪われるのではないか?と脅威に感じている、古くからの移民や貧しい人々の感情と重なります。トランプ元大統領の移民排除の政策に賛同していたのは、まさにこの層です。スピルバーグがいつからリメイクしたかったのかは知りませんが、トランプ政権が引き金になったんじゃないかしら?

ほぼ完璧な元作なんですから、変に弄らないのは正解でした。変更はジェッツの溜まり場のカフェ兼ドラッグストアの店主が、元作のドックからその夫人でプエルトリコ人のバレンティーナに変更になっていた事くらい。この役がリタ・モレノ!90歳にして演技も素晴らしく、きちんと歌声まで披露して、拝みたくなりました。

他には、アニータ(アリアナ・デボーズ)がジェッツに乱暴されそうになった時に、ジェッツガールズが「止めて!」と涙ながらに懇願したのは、元作にはなかったと思う。この変更も、me tooに連動されたものでしょう。良かったと思います。

バレンティーナは白人のドッグと結婚。融合と和解の象徴です。私が中学の時の社会の先生が、人種差別を無くすには、異人種で結婚して、混血の子を作る事だと言ったのを、思い出しました。少々乱暴な物言いですが、愛情があるなら相手を尊重するはずだし、異文化を受け入れるでしょう。スピルバーグも、モレノ出演なら重要な役にしたく、その意図があったのでは?

今回痛感したのは、楽曲の素晴らしさ。「クール」「トゥナイト」「マンボ!」「アメリカ」等々、大昔の作品なのに、若い人も絶対聞いた事があるはず。全く古さも感じず、見事なダンスと共に、スクリーンいっぱいの躍動感が広がる様子に、本当に胸が躍りました。

音楽のレナード・バーンスタインは、本来はクラシック畑の人。それがダンサブルな曲、愛を歌い上げるポピュラーソングなど、通俗的で、そして色褪せない永遠の名曲を作っている事に、今回目を見張りました。音楽を志すならクラシック、ダンスならバレエ、作家なら古典と、志すなら先ずは先達に学べと、聞いた事があります。文化や世相は、まさに温故知新と言うわけですね。

知っているラストですが、痛みの後に再生と和解が描かれていることに、改めて感銘を受けました。

蛇足ですが、今回少しだけ私的に苦言が(笑)。最初ベルナルド登場シーンで、へっ!はっ?何かの間違いでは?と目がパチクリ。すみません、私には元作はジョージ・チャキリスの映画で、イメージが違い過ぎました。はっきり言うと、もっとハンサムが良かった(言ってしまった)。途中で馴染んでは来ましたが、モレノが出るなら、チャキリスも一瞬でいいから、出て欲しかったなぁ。アルバレスには何の罪もなく、好演していたのに申し訳ない。

レイチェルは画像で観ると、イマイチかと思っていましたが、動き出す彼女は、花が綻んだように愛らしく、とても良かった。エルゴードは無難に演じていたと思います。イマイチ好きじゃないので、冷たくてごめんよ。アニータのデボーズは歌良し踊り良し気風良しで、私的に満点!私はこの作品で、アニータが一番好きなので、嬉しかったです。モレノのように立派になってね。

他はジェッツの面々が、私が子供の頃テレビで観てた、日活の不良に出で立ちから雰囲気までそっくりだったので、びっくり。丁度同じ時代で、若いもんは万国共通の鬱屈さを抱えていたのかと感じました。勘違いかな?

と、今こそリメイクする意義も意味もある作品だと、自信を持ってお勧めします。鑑賞後、グズグズ感想を書くのが遅れているうちに、戦争が始まってしまいました。反戦の意を込めて、この作品がオスカーに選ばれれば、嬉しく思います。





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