ケイケイの映画日記
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2016年05月05日(木) 「アイアムアヒーロー」

評判良いので、観てきました。私はゴア系は全然大丈夫で、むしろ好んで観るくらい。今作はR15ですが、18でも良かろうの巷の噂に、ちょっと期待して出向きました。結論として、良かったです。邦画のメジャー系が、名のあるキャストで、これだけ容赦なく流血させて、脳みそ爆発させて、本気でゾンビを作ったんだと思うと、ちょっと胸が熱くなりました(本当に)。監督は佐藤信介。

漫画家のアシスタントとして、冴えない日々を送る秀雄(大泉洋)。同棲中のてっこ(片瀬那奈)には結婚を迫られていますが、漫画家の道をあきらめきれません。そんな時、感染者が次々と人を襲う謎の感染病が国中に急速に広まり、国は厳戒態勢に。感染者はすぐに死亡するのですが、すぐにゾンビのように蘇り、人を襲います。彼らはZQN(ゾキュン)と呼ばれます。逃亡中知り合った比呂美(有村架純)と共に、富士山へ向かった秀雄は、アウトレットモールでZQNに襲われ、屋上でアジトを組む井浦(吉沢悠)や、藪(長沢まさみ)に救われます。

邦画では、インディーズでゴア描写が売りの作品も何作かありますが、誘拐だったり殺人鬼だったり、観ていて気分が悪くなるのね。だからあんまり楽しめない。そして陰気でめっぽう暗い。日本のホラーは、心理的に追い詰めるジメジメ系は得意ですが、この作品のように、爽快なスプラッターはあんまり観た記憶がござらん。

爽快って、お前は人でなしか?と思われそうですが、相手はもう人間じゃないですから、ゾンビですから。ゾンビと言うと、昔は走れないのが定番だったのに、昨今全力疾走出来ちゃう系も出てきて、百花繚乱状態。今作もその辺は色々工夫を施しており、予想通りに惨劇が起っておりました。

原作が家に一巻だけあって、読みました。終わりの方で、てっこが感染するところで終わっており、それまでは裏バクマン的な、目の出ない中年に差し掛かる男の悲哀が中心に、描かれています(これはこれで面白い)。原作の英雄の妄想はもっと病的で、これ、陽性の大泉洋の役かなぁ?と訝しく思いましたが、原作は長尺のようで、だいぶキャラは省略。上手く脚色していたと思います。原作のてっこは、英雄の良き理解者で、私は映画での改変は残念だったけど、片瀬那奈の捨て身の熱演で、良しとしよう。

ゾンビ映画が人気なのは、アクションとしても楽しめるからかと、個人的には思っています。今作も配役陣は、アクションとしては想像できない面々でしたが、みんなキレが良く、頑張っていたと思います。その辺も花丸。特にラスト、ガンガン頑張る大泉洋は、とってもカッコ良かったです。

作り手の本気度としては、ロケ地や美術など、韓国映画のスタッフに協力を要請したとか。流血と言えばバク・チャヌクだし(笑)。この辺も努力が実って、見応えがありました。

協力し合っているようで、誰が「帝王」になるのか虎視眈々な様子、弱い立場の女性などの描写も、原作ではもっと描きこんでいるのでしょうが、映画はこれで充分。それより気弱でヘタレな英雄が、崖っぷちで「ヒーロー」として覚醒する様子に焦点を当てた脚本は、それまで待ちに待たされたので、カタルシスも存分に味わえました。

ラストも余韻があって良かったです。ちょっとロメロの「ゾンビ」のラストを思い出しました。原作はまだ続いているようなので、続編作られたら、絶対観たいと思います。


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