ケイケイの映画日記
目次過去未来


2016年05月06日(金) 「ズートピア」

すごーく良かった!久しぶりのディズニーです。大人が観る方が楽しめると言う評判を聞いたので、観てきました。観てびっくり。これ程秀逸に人間世界の問題を映しているなんて。サスペンスとしても、バディっものとしても、アクションとしても楽しめる、しっかりした脚本です。もちろん愛も希望も勇気もあってよ。監督はバイロン・ハワード&リッチ・ムーア。

可愛いウサギのジュディ。頑張り屋さんの彼女の夢は、正義の味方の警察官。、警察学校で一番になって、ウサギとしては初めて、警察官になります。配属は、肉食・草食動物が仲良く共存する夢の街・ズートピア。しかし水牛のボゴ署長からは歓迎されず、偏見の目で観られます。ズートピアの現在の難事件は、肉食動物ばかりが失踪している事。ジュディにもお鉢が回り、ひょんな事から、この街を知り尽くしている、キツネの詐欺師ニックの協力を得て、捜査を開始します。

勇気凛々、可愛い絵柄からのスタートダッシュからは、想像もつかない内容です。出てくるのは、偏見・差別・社会的格差に、票取りしか考えていない政治家の隠蔽工作からパワハラまで。そしてあっと驚くどんでん返し。これを人種・男女間・社会的地位・経済格差に置き換えれば、まるで人間社会の縮図です。尻尾まであんこ状態に詰め込んでいるのに、綺麗に整理されているので、すぐに呑み込め咀嚼できます。子供には浅く、大人には奥深く、しっかり理解出来る作りです。

ジュディの事は無視する署長に、直談判で掛けあうジュディ。「交通違反を一日で100件集めろ」と言われ、「半日で200件集めるわ!」と頑張る彼女。結果、数秒の違反でも、鬼のように反則切符を取って、ブーイングの嵐。警察学校では、体格のハンデを人の三倍努力して克服したジュディ。「学校」はそんな彼女を温かく見守ってくれたけど、社会では、努力だけでは通用しないのですね。もうこの序盤から、何てリアルな・・・と、心は鷲掴みに。

ジュディの両親は、娘の将来を思い、夢をあきらめさせようとします。前人未到のパイオニアは、どれだけ苦労するか、大人ならわかっているから。分相応、身の丈だけに生きるのは、向上心を失くすこと。でも足るを知らない人は、向上心を野心に変えてしまった。う〜ん、難しい難しい!この境目はどこにあるかしらと、今でも答えが出ません。

差別も偏見もない社会なんて上辺だけ。現実はそうじゃないんだよ。ウサギの女の子の警察官なんて、所詮人寄せパンダだ。苦い現実を知り、一度ジュディを挫折させるとは、何と見事な脚本か。挫折を知らない人生は味気なく、傲慢になるだけだもん。そこから這い上がらせる様子も心憎いです。

皮肉屋で人生を斜めに見ているニックも、暗い過去がそうさせていました。そんな彼も、ポジティブバカ一歩手前のような、ジュディに触発されます。どんなに自分が踏みつけにされても、泣かなかったジュディですが、劇中一度だけ泣きます。それはニックの心を傷つけた時。頑張り過ぎて、人にも同じ事を望んでいた彼女ですが、人にはそれぞれ、そうなる事情があるのだとわかったからです。

一割の肉食動物と九割の草食動物。社会の格差を映しているのでしょう。しかしジュディは言います。「悪い草食動物だっているし、いい肉食動物だっている」。その逆もまたしかり。一度も差別されたり偏見に晒されたりしなかった人って、いるのかな?なかったと言う人は、まだ人生を知らないだけだよ。金持ちだって、庶民からみれば偏見の対象です。そしてその地位も、この作品の中のように、あっと言う間に地に堕ちてしまう時も。素っ裸の自分を見つめ、素っ裸の相手を尊重しようよ。

こんな深い内容ですが、ディズニーらしく快活でテンポよく、ユーモアたっぷりに、ジュディたちは疾走します。初夏一番のお勧め作、どうぞご覧下さい。


ケイケイ |MAILHomePage